2011 Fiscal Year Annual Research Report
開放系大気CO2増加実験による針広混交林の虫害評価手法の高度化
Project/Area Number |
21580170
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邊 陽子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 学術研究員 (30532452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松木 佐和子 岩手大学, 農学部, 講師 (40443981)
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Keywords | 高CO2濃度 / ブナ / FACE / 被食防衛能 |
Research Abstract |
本研究の目的は、将来予想される高CO2濃度環境下での樹木の被食防衛能の変化を解明し、地球環境変動下での食葉性昆虫の食害に対する森林管理の基礎的な知見を得ることである。これまでに、高CO2濃度環境下においては樹木の被食防衛能が変化し、植食者と樹木の相互関係が変化する可能性が示唆されているが、長期間の高CO2濃度環境下で生育させた樹木を用いて行われた研究例はほとんどみられない。本研究では、北海道大学北方生物園フィールド科学センター札幌研究林実験苗畑に設置されている、根系を制限することなく長期間CO2付加が可能である開放系大気CO2増加(Free Air CO2 Enrichment ; 以下FACE,CO2濃度 約500ppm)装置に9年間生育させたブナと対照区(CO2濃度 約370ppm)のブナの幼木を用いて、もっとも虫害を受けやすい開葉期のフェノロジー、葉の防御形質(LMA、C/N比、防御物質量)および解剖学的特性を明らかにした。また、ブナの生育期間中の昆虫センサスについても実施した。開葉時期は、FACE区と対照区で変化は見られず、高CO2濃度環境下においても開葉時期は変化しないことが示唆された。葉の防御形質については、年変動はみられたものの、FACE区の方が高い傾向にあった。とくに葉が完全に成熟した6月中旬以降で違いが見られた。また、葉内の被食防衛物質の局在を顕微鏡により観察したところ、FACE区では夏に表皮細胞中に被食防衛物質と思われる物質が存在していることが明らかとなった。昆虫センサスの結果では、FACE区と対照区で食葉性昆虫の種類や出現時期に違いは見られなかった。本研究の結果から、長期間高CO2濃度環境下におかれたブナの場合、個葉の防御能力が高まる傾向にあることが示唆された。
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