2010 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性の喪失をもたらす外来樹種ニセアカシアの種子繁殖メカニズムの解明
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21580172
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小山 浩正 山形大学, 農学部, 教授 (10344821)
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Keywords | 種子散布 / 発芽 / 休眠 / 外来種 / 生物多様性 / 環境保全 |
Research Abstract |
ニセアカシアの種子繁殖特性を調べるために、研究地として設定した山形県鶴岡市を流れる一級河川の赤川河川敷沿いの30個体から種子を採取し、個体ごとに休眠種子と非休眠種子の比率を調べたところ、全ての個体において休眠種子と非休眠種子があることが確認された。ただし、両者の比率は個体により異なり(非休眠種子の割合で最小8%~最大60%)、その大小関係は次年度の調査でも大きく異なっていなかった。したがって、個体により固有の比率を持ち、休眠種子を生産しやすい個体と非休眠種子を多く生産する個体があることが明らかになった。非休眠種子を散布時期に相当する9~12月に野外に播種すると、当年および翌年の春に発芽することが確認された。したがって、非休眠種子は更新能力があると考えられた。一方、休眠種子の発芽機会を調べるために、一般的に休眠打破に有効とされる交代温度条件、明条件、ヒートショック処理を行った。交代温度条件および明条件では発芽は促進されなかった。一方、ヒートショックでは、攪乱後に形成される裸地を想定した70℃以下の温度では発芽は観察されなかったが、山火事を想定した90~200℃では発芽の促進が観察された。このことは、ニセアカシアの土壌シードバンクは、原産地では山火事からの更新も考えられるが、自然状態で山火事が起こることがほとんどないわが国の河川周辺では更新の契機になっていないと考えられ、消去法的に河川洪水による種皮の損傷が候補と考えられる。ニセアカシアは休眠タイプの異なる種子を同時に生産することで、非休眠種子は散布後ただちに発芽して新規個体群の創生に貢献し、休眠種子は土壌シードバンクを形成し、既存個体群が撹乱により破壊された際のバックアップとして機能し、このことは河川周辺での急速な分布拡大に関係していると考察される。
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Research Products
(3 results)