2010 Fiscal Year Annual Research Report
低ダム群施工区間におけるリター動態と物質移動過程の評価
Project/Area Number |
21580186
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Research Institution | Minami Kyusyu University |
Principal Investigator |
北村 泰一 南九州大学, 環境園芸学部, 教授 (90214816)
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Keywords | アラカシリーフリター / 成分溶出 / 渓流水質 / 濃度分布 / イオン組成 / リター分解 / 渓流環境 |
Research Abstract |
河畔植生が渓流水質に及ぼす影響を明らかにするため、2010年5月、対象渓流(宮崎県西都市)の河畔域に生育するアラカシの当年葉と2年葉を採取し、十分な洗浄・乾燥と重量測定の後、1,000(CC)の現地渓流水を満たした50個のビーカーに5枚ずつ投入してサブサンプルとし、常温実験室に置いた。このうち25個のビーカーには自然渓流の再曝気を想定し市販ポンプにより酸素を供給し続けた。投入から1、5、10、20、30日後に、各実験区から無作為にサブサンプルを5個づつ回収し、葉の乾燥重量を計測し、投入水に含まれる全炭素量(TC)、全窒素量(TN)、陽イオン濃度、陰イオン濃度を測定した。投入から1日後の重量損失は4~7%で、これは広葉樹リーフリターの約1/4であり、10目後の重量損失も10%程度であり広葉樹に比較して緩慢であった。10日以降の重量損失は、酸素を供給することにより促進された。重量損失に比例してTC、TNの溶出は進んだが、10日以降は酸素の供給がない場合は、TC、TNの溶出はほぼ停止した。これらの結果から、常緑樹リーフリターでは表面を覆うクチン質が葉の重量損失を遅らせ、酸素を供給することによりクチン質の分解は促進されると類推した。陽イオン、陰イオンは、重量損失の進行・酸素供給の有無とは無関係に溶出し、30日後ではK^+が全陽イオンの70%を占めた。また、NH_4^+、K^+、Mg^<2+>、Cl^-濃度が倍増し、Ca^<2+>は2年葉で、PO_4^<3->陰は当年葉で溶出が進んだ。以上の結果から、河畔域から渓流に供給される常緑樹リーフリターの溶出成分は、渓流水質を規定する重要因子となりうることが示唆された。
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Research Products
(2 results)