2011 Fiscal Year Annual Research Report
倒木上に成立したヒノキ実生の養分獲得における菌根の寄与の解明
Project/Area Number |
21580198
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
溝口 岳男 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, グループ長 (60353869)
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Keywords | 菌根形成 / ヒノキ天然更新 / 木質粗大有機物 / 倒木更新 / 更新立地 / 窒素濃度 |
Research Abstract |
倒木など林床に存在する木質粗大有機物は、更新立地として認識はされているが、そのクオリティを検証されていない。そこで木質粗大有機物について、実生の菌根形成の実態と実生の栄養獲得への寄与を地表発生実生との比較調査を行うことで明らかにする。 森林の粗大木質有機物上でヒノキの天然更新実生が地表(土壌)と遜色ない菌根形成を行うこと、また実生の窒素濃度は菌根化率とは連動しないことが明らかになった。ヒノキにおいては、初期更新立地としての木質有機物は菌根化の観点からは地表(土壌)と変わらない。積雪や病害回避サイトとしての木質有機物の意義を裏付けることができた。 また倒木上に更新していた実生の周辺の基質を接種源とし、ライムギを用いてトラップカルチャーによる菌根菌の増殖と菌種の同定を試みた。その結果、ライムギの根にアーバスキュラー菌根の形成が確認され、基質中に菌根菌の繁殖体が存在することが裏付けられた。また、ヒノキ実生の根を接種源としてトラップカルチャーを行った場合でも、同様にライムギ根に菌根形成が見られ、倒木・根株上に菌根菌が持続して存続、拡大しうる可能性が示唆された。しかし、トラップカルチャーに用いた土壌中への菌根菌胞子の形成は極めて乏しく、菌根菌種の同定には至らなかった。 以上の結果は、初期更新立地としての木質有機物は菌根化の観点からは地表(土壌)と変わらないこと、積雪や病害回避サイトとしての意義が大きいことを見出すなど、当初の目標をおおむね達成している。ただし実生の成長に対する菌根化の意義については、今後さらに検証と応用技術の開発が必要である。また粗大木質有機物の種類およびその腐朽度と、実生の菌根化および栄養獲得との関係については、さらに調査事例を増やしてその関係を解明していく必要がある。
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