2010 Fiscal Year Annual Research Report
弾性を有する木質炭化マットの成形と断熱材への適用に関する基礎研究
Project/Area Number |
21580199
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
関野 登 岩手大学, 農学部, 教授 (30171341)
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Keywords | 木質系断熱材 / 炭化マット / 熱伝導率 / 空隙構造 / 炭化温度 / 表面化学特性 / 細孔特性 / ホルムアルデヒド吸着 |
Research Abstract |
本年度は、(1)木質炭化マットの吸着性能(ホルムアルデヒドおよびアンモニア)および表面化学特性と細孔特性から見た吸着性能の発現メカニズム、(2)炭化小片間の等価熱伝導率から見た断熱性向上のメカニズム、以上の2項目に焦点を絞って実験と解析を行い、以下の知見を得た。 アンモニアに対する吸着性能は木質小片断熱材と同程度であるが、ホルムアルデヒド吸着では全ての炭化温度条件(400~700℃)で木質小片断熱材を上回った。このような吸着性能は、炭化温度の上昇に伴って表面化学特性が酸性から塩基性に変化することや、炭化温度600℃以上での細孔構造の発達に起因することが確認された。また、既往の炭化温度と重量減少の関係から、本研究での炭化方法は酸素混入1%程度であることが示唆された。 昨年度の研究成果である炭化による木質小片断熱材の断熱性能の改善について、そのメカニズムを小片間粗空隙の等価熱伝導率の観点から考察した。細胞内孔・木炭実質・吸着水分・小片間空隙という4成分系で直列および並列の熱伝導複合モデルを適用し、マット内の粗空隙の等価熱伝導率を試算した。炭化温度400℃のマットでは、粗空隙の等価熱伝導率は0.031W/mKであり、静止空気の熱伝導率0.025W/mKの2割増し程度に改善された。この値は木質小片断熱材での値0.045W/mKの約2/3であり、小片間粗空隙が細分化されて対流および輻射が抑制された効果と考えられる。一方、炭化温度700℃では、粗空隙の等価熱伝導率は0.042W/mKと大きく、炭化が過度に進行して連続空隙が生成された可能性が示唆された。 なお、本年度の当初計画にあった断熱性能の温度・水分依存性および比熱測定は、上記2項目の検討に多くの時間を要したこと、および東北関東大地震の影響を受けて本年度は実施できなかった。これらは来年度に繰り越して実施の予定である。
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