2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21580206
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅村 研二 Kyoto University, 生存圏研究所, 助教 (70378909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井 秀一 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (00135609)
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Keywords | クエン酸 / 木質成形体 / 天然接着剤 / ポリカルボン酸 / 非化石資源 / 木粉 / 樹皮 / 木質材料 |
Research Abstract |
本課題では、接着剤りに非化石資源由来の物質を用いて新規木質材料を創成することを目的としている。本年度はクエン酸を接着剤に用い、木粉や樹皮粉末による木質成形体の作成を試みた。 【実験方法】原料として、アカシアマンギウム(A. mangium)やスギ(Cryptomeria japonica)の木部および樹皮の粉末を用いた。これらの粉末とクエン酸粉末を所定量熔器へ加え、振盪させて混合粉末とした。この粉末を各種金型へ充填したのち、ホットプレスで熱圧し、木質成形体を得た。得られた成形体について曲げ試験、吸水試験、煮沸繰り返し試験、FT-IRによる化学構造解析などを行った。 【結果および考察】アカシア木粉を用い、熱圧温度を200℃とした場合のクエン酸含有率と曲げ特性の関係を調べた結果、クエン酸を添加すると強度が向上し、20wt%の場合で最も高い曲げ強度(36MPa)を示すことが明らかとなった。煮沸繰り返し試験でも20wt%の場合で優れた耐水性を示した。熱圧温度について検討したところ、曲げ試験では180℃のときに最大強度(39MPa)を示すことが分かった。一方、成形体の耐水性は熱圧温度が高くなるにつれて改善される傾向が認められた。アカシア樹皮粉末を使用した場合、成形体は得られるものの、全体的に木粉の場合よりも低い物性を示すことが分かった。スギの木粉や樹皮粉末を用いた成形体は、アカシアの場合と同程度の強度を示すことが見出された。煮沸繰り返し処理後の成形体のFT-IRスペクトルを観察したところ、1730cm^-1付近の強いピークが確認された。これにより、クエン酸のカルボキシル基が木粉の水酸基とエステル結合していることが推測された。以上の結果、クエン酸を用いることによって良好な物性を有する木質成形体が得られることが明らかとなった。これは、新しい木質材料開発の一つの方向性を示していると考えられる。
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