2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21580210
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
松井 直之 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 主任研究員 (80353853)
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Keywords | 葉 / リグニン / DFRC法 / 針葉樹 |
Research Abstract |
樹木の葉はバイオマス資源の中でも未利用の割合が特に高い。その有効活用のための化学分析を行う上で、樹葉中のリグニンの存在が常に問題となっている。一般的なクラーソン法を用いた樹葉のリグニン分析は過大な値を与えることが知られており、樹葉中のリグニンに関して厳密な検証を行った例はきわめて少ない。本研究では、リグニン固有のβ-アリルエーテル結合のみから分解生成物を得ることのできるDFRC法を用いて樹葉の分解処理を行い、樹葉リグニンの存在の確認、ならびにその分布と木部リグニンとの差異の検証を行うことで、葉の中に多種多様に存在するフェノール類の中で高分子リグニンが果たす役割を明らかにすることを目的とする。 22年度は日本産の様々な針葉樹の葉に含まれるリグニンについてその分布を詳細に検討した。前年度に確認したスギに加え、アカマツの葉に対絶乾重量で10%程度と特に多くのリグニン分解生成物を検出した。これに対してヒノキやイチョウでは痕跡量の検出に留まり、針葉樹の葉の間でもリグニン量には大きな差が存在することが明らかとなった。その原因としては葉の中の通道組織の存在とその発達の度合いが鍵となると予想される。この結果では一般的なニトロベンゼン酸化分解法よりも樹種による差異がはっきりと出ており、リグニンのみから分解生成物を与えるDFRC法の特徴がよく現れたものであると考えられた。 また、数種の広葉樹の葉についてもDFRC分析を行い、グアイアシル型に加えてシリンギル型の分解生成物を得られたことから、葉においてもリグニンは木部と同様の構造を有することが確認できた。
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