2009 Fiscal Year Annual Research Report
モデル水産植物スサビノリにおける補色適応の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
21580213
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
嵯峨 直恆 Hokkaido University, 大学院・水産科学研究院, 教授 (10231333)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三上 浩司 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (40222319)
|
Keywords | 補色適応 / 光色 / 光合成色素 / 紅藻 / スサビノリ |
Research Abstract |
本研究は、海産紅藻スサビノリの光合成色素タンパク質複合体フィコビリソームにおける赤色光、緑色光および青色光に対する応答機構を研究するものである。これまでに一部のラン藻において、異なる光色下での培養でフィコビリソームの構成が可逆的に変化することが明らかになっており、その変化は補色適応と呼ばれている。しかしながら、ラン藻と同じくフィコビリソームをもつ紅藻類においては補色適応の有無が明らかとなっていないのが現状である。 本年度は、スサビノリにおける補色適応の有無を明らかにするために、スサビノリ葉状体を異なる光色で培養し、藻体の色彩がどのように変化するかを観察した。光源には白色蛍光灯および赤色光(波長660nm)・緑色光(波長525nm)・青色光(波長470nm)の単色光を照射可能な発光ダイオードを用いた。異なる光色での培養後、光合成色素(クロロフィルa・フィコエリスリン・フィコシアニン・カロテノイド)相対含有量を測定した。また、赤色、緑色および青色光で一定期間培養を行い、藻体の色彩に変化が生じた時点から光色を交代させることで、藻体の色彩が光色によって可逆的に変化するかを観察した。 結果として、通常の白色蛍光灯での培養と比較して、青色光で培養した藻体は赤色を呈し、光合成色素ではおもにフィコエリスリンの増加がみられた。一方、赤色および緑色光で培養した場合は、藻体は緑色を呈し、フィコエリスリンの減少がみられた。また、赤色光から青色光、青色光から赤色光のように光色を変化させた場合、藻体の色彩およびフィコエリスリン含有量は最終的に照射した光色に伴って劇的に変化した。これらのことから、スサビノリ葉状体の色彩の変化は光色に依存的であり、可逆的に変化することが明らかとなった。以上のことから、紅藻スサビノリが補色適応能を有することが証明された。
|