2011 Fiscal Year Annual Research Report
濾過食二枚貝のホタテガイ・マガキによる付着珪藻の利用メカニズムの解明
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21580217
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 絹子 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (90191931)
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Keywords | ホタテガイ / マガキ / 付着珪藻 / 濾過食者 / 付着動物 / 養殖システム / 生理生態 / 漁場環境 |
Research Abstract |
研究フィールドとしていた宮城県女川湾は、2011年3月11日に発生した東北太平洋沖大地震による津波により、環境の大規模撹乱を受け、また研究施設や設備もすべて流失し、壊滅的な被害を受けた。そこで、本研究課題については、研究計画を一部変更して、フィールドを青森県陸奥湾に移し、実験施設を作り、研究を実施した。ホタテガイの食物として、重要であることが分かっている付着珪藻の利用メカニズムについて、安定同位体標識による新たな手法を用いて解析した。付着珪藻の取り込みの大きさは、(1)海水中の植物プランクトンの濃度、(2)付着動物の付着状態という、二つの要素で変わることが分かった。2010年度実施の女川湾において生育したマガキ・ホタテガイの場合には、付着動物の有無は大きな影響を与えなかった。一方、陸奥湾のホタテガイの場合には、付着動物の存在により、植物プランクトンの摂取は無い場合よりも半分以下に減少することが分かった。陸奥湾でのホタテガイ養殖は、パールネット方式であるため、付着動物が大量につきやすいことが原因と考えられる。また、ホタテガイの実際の活動の場であるパールネット内の食物環境は、周囲の海水中と異なっていることが予測されたので、潜水士によるパールネット内の海水採集を試みた。その結果、パールネット内の物理環境も食物環境も、周囲の海水とは異なっていることが、はじめて明らかになった。陸奥湾のホタテガイにとって、付着珪藻の役割はひじょうに大きく、コンスタントに常時取り込むことができる状況が、パールネットという環境によりつくられていることが分かった。付着珪藻の種類は多様であり、運動性のあるものは、殻表上から滑り込むようにして入り込み、一方、付着性の強い種類は、付着動物等の活動により剥離したものがネット内に懸濁してから取り込まれる。つまり付着珪藻の利用メカニズムには二大経路があることがわかった。
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Research Products
(6 results)