Research Abstract |
昨年度研究において,解剖学的に本種の成熟に関する概要が明らかにされたが,本年度は組織学的手法を用いて,2009年11月~2010年10月の一年間にわたり,マレーシアボルネオ島コタキナバル魚市場において,3~7日の間隔で採集したボウズガレイの生殖腺の発達状態をより詳しく調べた。その結果,体長30cm未満の個体のほとんどは雄(一部は性別判定不能)であること,体長18.7cm以上では精子の存在が確認された。一方,体長30cmを超える個体はほぼ100%が雌であり,そのうち生殖腺指数が6を超える個体には成熟卵が認められた。これら雄並びに雌の生殖腺の発達には季節性は認められず,周年産卵の可能性が示唆された。また,雄から雌への性転換の可能性は極めて低いと考えられた。以上の知見に基づいて,本種では体長20~30cmの個体を雄として,体長30cmを超えかつ生殖腺指数が6以上の個体を雌として用いることにより,人工授精が可能なことが明らかになった。上記の時期にボルネオ島マレーシアサバ州北西部の各地の砂浜海岸において小型桁網の曳網により得られた仔稚魚類の選別同定を進めたが,本種と推定される稚魚は確認されず,ボウズガレイの稚魚成育場は波打際よりは深い水深帯にあると推定された。 目の移動方向が柔軟なボウズガレイに対して,目の移動方向が固定しているヒラメ並びにマツカワ仔稚魚を用いて,目の移動,体の左右非相称化,それらに連動して発現する色素その他の異常について,その機構に関する分析が同時に進められ,今後の研究の基盤の充実が図られた。本研究の分担者は,こめ間の先進的な研究が高く評価され,「内臓の左右非対称性を制御するノルダル経路によるヒラメ・カレイ類の眼位制御機構」に関する研究が平成22年度日本水産学会進歩賞を受賞している。
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