Research Abstract |
ハマグリMeretrix lusoriaは,日本各地の干潟で最も普通に見られる二枚貝であったが,現在は多くの地域で激減している.日本一の漁獲を誇る熊本県も同様で,漁獲量は最近20年間で約20分の1に減少した.私は,『干潟が健全で乱獲がなければ,ハマグリは砂質干潟の優占種で,その保全は漁業だけでなく,干潟生態系を守る上でも重要である』との考えに基づき,本種の生活史特性の把握,個体数激減の原因解明,さらに,資源回復と管理技術確立に向けた研究を進めている 平成22年度は,資源管理の基礎データとなる稚貝定着・成長・移動分散・寿命および資源量の年変動に関する研究を継続するとともに,干潟漁場や素堀池での飼育実験や浅海での垂下飼育実験を行い,ハマグリ蓄養・養殖技術の確立を目指した.その結果,成長はやや遅いものの,ハマグリは環境の変化に強く,資源管理の効果が大きい二枚貝であることがわかった,ただし,稚貝の着底量には年変動が大きく,安定的に漁獲するには資源管理が不可欠であることも明らかになった.また,干潟漁場・素堀池・浅海での飼育実験におけるハマグリの成長は良好で,出荷調整のための蓄養だけでなく,種苗生産→干潟・素堀池での養殖→浅海での蓄養という『ハマグリの完全養殖』の可能性が強まり,母貝の確保も難しくなっている瀬戸内海などでのハマグリ資源回復の道が開かれた ただし,資源量の豊かな熊本県では,干潟漁場でのハマグリ採貝が最も効率のいいハマグリ生産方法であることは言うまでもない.しかし,そのためには漁業者間の資源管理に関する合意形成が不可欠である.今後は,平成20年度に作成したハマグリの資源管理に関するリーフレットや著書を活用し,ハマグリの実践的な資源管理のための方策を探りたい
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