Research Abstract |
ハマグリMeretrix lusoriaは,日本各地の干潟で最も普通に見られる二枚貝であったが,現在は多くの地域で激減している.日本一の漁獲を誇る熊本県も同様で,漁獲量は最近20年間で約20分の1に減少した.熊本県では,玉名市菊池川から宇土市網田に至る広大なハマグリ生息地で,多くの漁協組合人が採貝を行っている.そのため,総合的・実践的な資源管理を実施するには,ハマグリの生息地全域で,ハマグリの生息状況と漁場間の移動を調査する必要がある. 平成23年度は,菊池川から網田の合計19地点で,ハマグリのサイズ組成と生息地の泥分を比較した.その結果,稚貝(殻長5mm未満)と幼貝(殻長5~30mm)の密度は,河川からの距離と逆相関があり,稚貝と幼貝の密度が100個体/m2を越える地域は,河川からそれぞれ100m以内,200m以内に限られていた.ただし,河川に隣接していても泥分が高い場所は稚貝・幼貝が少なかった.一方,成貝(殻長30mm以上)の密度と河川からの距離には相関がなかった.また,稚貝・幼貝・成貝の密度と泥分にも相関がなかった.場所別に見ると,稚貝密度が特に高かったのは白川河口であったが,成貝は少なかった.逆に,河川から離れた網田では稚貝・幼貝はほとんど見られなかったが,成貝の多い地点もいくつか見られた.このことは,稚貝は河口周辺の低塩分の砂地に着底し,成長と共に周辺の海域に移動することを示唆している. このような漁場問のハマグリの移動は,ハマグリの資源管理を難しくしている.今後は,種苗生産や畜養・養殖などを併用して,多角的な資源管理を行う必要がある.
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