Research Abstract |
人工飼料にイカ肝油,オリーブオイル,大豆油,しそ油の4種類をそれぞれ別々に添加し与えた場合に幼生の成長に違いがあるかを調べた.0.8kl容角型水槽を4個使用し,各水槽に3個体ずつ収容した.人工飼料を9,13,17時に給餌し,人工飼料のみを与えて10日間飼育した.その結果,4種類の油を単独で添加した人工飼料を与えた場合では,ほぼ全ての個体において湿重量が減少し,10日以内に斃死した個体が多かった.飼料性能が悪いために総摂餌量が少なく,添加した油脂の効果を検証することができなかった. 次に,人工飼料の摂餌忌避成分を特定するため,1.5kl容角型水槽に外套長54.20~99.12mmの個体を15個体収容し,人工飼料を飼育海水と人工海水にそれぞれ浸漬させたものを与え,忌避個数を計測した.同様の方法で対照飼料として,人工飼料をそのままの状態で与え,忌避個数を計測した.また人工海水の成分であるNaCl,KCl,CaCl_2,MgCl_2,Na_2SO_4を成分比に基づいて単独で溶解させた水溶液と,1.0~3.5%の範囲で8段階のNaCl水溶液に浸漬させた場合についても忌避性を調べた. その結果,人工飼料をそのままの状態で30個与えた場合,全ての飼料を捕捉し摂餌した.しかし,10分間飼育海水に浸漬させると30個中22個を忌避した.人工海水に浸漬させた場合でも30個中19個が忌避された.人工海水の成分ごとではNaClのみ30個中4個が忌避されたが,他の成分は忌避されなかった.また,各成分の3.4%水溶液に浸漬させた場合,NaCl,KClでは30個中15個,CaCl_2では8個,MgCl_2では1個が忌避された.さらにNaClでは3.0%水溶液の場合10個中2個,3.2%が7個,3.5%が10個全て忌避された. 以上からアオリイカ幼生は飼料中のNaCl濃度が高いことによって人工飼料を忌避すると考えられる.
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