Research Abstract |
哺乳類では,特定の造血因子の存在下でコロニーを形成させる"コロニー形成法"等により,造血幹/前駆細胞が同定されて来た.しかし魚類では,造血幹/前駆細胞の培養系が確立されておらず,魚類の造血機構の解明は主に形態学的手法に限ちれていた.そこで,我々は魚類造血機構解明に必要な,培養技術の開発を試みた. 造血細胞の培養(Bulk培養):哺乳類では,造血支持能を持った細胞株と造血細胞を共培養することで,造血前駆細胞の分化能を調べる方法が確立されている.そこで,我々は魚類の造血関連組織(腎臓・脾臓・胸腺など)から細胞株の樹立を試み,いくつかの造血支持能を持った細胞株を得ることに成功した.これらの支持細胞層上にギンブナやコイの腎臓造血細胞を播種したところ,造血細胞の活発な増殖が認められ,最長で60日間・20代以上の継代維持が可能であった.また,増殖した細胞の性状を調べたところ,T細胞およびマクロファージ関連遺伝子の発現が認められ,さらに抗体を用いた解析により,CD4陽性CD8陰性T細胞が増殖していることもわかった. 造血細胞の培養(コロニー形成試験):上記Bulk培養の"ならし培地"中にはT細胞またはマクロファージの増殖因子が含まれると考えられた.そこで,あらかじめ96穴プレートに支持細胞層を形成させ,これに1個/穴になるように腎臓造血細胞を播種し,ならし培地を加えて培養した.その結果,96穴中2~3穴でコロニーが形成され,これらは,マクロファージ関連遺伝子のみを発現するコロニー(type I)とマクロファージのみならずT細胞関連遺伝子も発現するコロニー(type II)からなっていた.近年,河本・桂らによって,新たな血球分化モデル(ミエロイド基本モデル)が提唱されたが,本研究のコロニー形成試験でも,マクロファージとT細胞の両方の性質を持った細胞の存在が示唆された.
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