2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子生態学によるアワビ近縁種の分化メカニズムの解明
Project/Area Number |
21580240
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
原 素之 Fisheries Research Agency, 養殖研究所, チーム長 (30372048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 実 東北大学, 農学部, 准教授 (70232204)
木島 明博 東北大学, 農学部, 教授 (50161451)
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Keywords | 遺伝・育種 / 保全遺伝学 / アワビ / マイクロサテライトDNA / ミトコンドリアDNA / 集団分化 / 類縁関係 / 種苗放流基準 |
Research Abstract |
形態が似ているエゾアワビとクロアワビは近縁種とされ、分布域も近接しているため管理保全単位が曖昧である。このため両種の減少した資源を回復させるため、安定した種苗生産が可能なエゾアワビ種苗がクロアワビ分布域へ放流され、保全遺伝学観点からその影響が危惧されている。本研究は両種の類縁関係と分化の様相を解明し放流管理基準を明確化することを目的に、初年度は分化時間の推定などに有効なミトコンドリアDNAの新規遺伝マーカーの開発や両種の分化メカニズム解明の鍵となる境界域での集団構造の解析を進めた。(1)塩基配列データバンク情報からミトコンドリアDNA上の15遺伝子領域を解析するための遺伝マーカーの開発に成功した。そのうち8マーカーが両種間で有意な違いが認められ、種間関係や集団分化のメカニズム解明に重要な情報が得られることが示された。(2)太平洋側の境界域(福島県から茨城県沿岸)におけるアワビにおいて、マイクロサテライトDNA分析ではクロアワビに近く、ミトコンドリアDNAではエゾアワビに近かった。この矛盾は、マーカーによる進化(置換)速度や環境適応性との違いと考えられ、両種の分化が単純な一方向でなされたのではなく、様々な歴史的なイベントに起因していることを示す意義深い事実と考えられる。(3)日本海側の境界域(青森県西部から秋田県南部沿岸)における両種の個体の帰属解析では、それぞれへの帰属率が連続的に変化していることが観察された。さらに、同緯度地域に海域おける岸側と沖側(島嶼)集団の遺伝的違いも明らかになり、境界域では複雑な集団構造を形成している可能性が示唆された。この地域での詳細な集団構造の調査は、エゾアワビとクロアワビの分化メカニズムを解明するための重要な情報になると考えられる。
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Research Products
(2 results)