Research Abstract |
食の安全情報,政府や生産者の対応に対する信頼が,放射能汚染問題後の福島県産牛肉の購入選択行動にどのような影響を及ぼすのか,また,その影響は放射性物質検査結果の公表の仕方によって同県産牛肉に対する支払意志額(WTP)にどのように反映されるか,2010年10月に実施した選択実験Web調査の回答データに基づいて分析した。その結果,次の知見が得られた。 1.食品の放射能汚染情報に対する信頼が高い人ほど,「放射性物質不検出でも同県産牛肉を買わない」,「不検出なら買う」確率が高く,「放射性物質検査済みなら買う」,「未検査でも買う」確率が低い。一方,政府と生産者の対応に関する信頼が高い人ほど,「放射性物質不検出でも同県産牛肉を買わない」,「不検出なら買う」確率が低く,「放射性物質検査済みなら買う」,「未検査でも買う」確率が高い。 2.放射性物質検査結果が,「検査済み」としてしか公表されない場合,「検査済みなら買う」意向を持つ回答者の福島県産牛肉に対するWTPは621円/100gであるのに対し,「不検出なら買う」意向を持つ人では半減し,「不検出でも買わない」意向をもつ人では0円である。 3.放射性物質検査結果が,「検査済み」,「基準値の1/10以下」,「不検出」のいずれかで公表される場合,「検査済みなら買う」意向を持つ人のWTPは,「検査済み」511円,「基準値の1/10以下」537円,「不検出」631円であるのに対し,「不検出なら買う」意向を持つ人では「検査済み」0円,「不検出」631円,「不検出でも買わない」意向をもつ人では「検査済み」0円,「「基準値の1/10以下」388円,「不検出」636円である。 さらに,2011年9月と2012年3月にそれぞれ第3回目,第4回目の消費者定点Webアンケート調査を実施した。第3回目までの継続回答データについて縦断的共分散構造分析を行った結果,食の安全に対する消費者の総合的信頼は,福島第1原発事故に伴う食品の放射能汚染問題発生の前後で構造変化が認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2011年3月の東日本大震災の影響により,当初予定していた2011年3月の調査を中止せざるを得なくなり,半年おきの連続した定点観測調査が不可能となった。また,福島原発事故に伴う放射能拡散により,食の安全研究領域でこれまで対象とされていなかった食品放射能汚染問題がクローズアップされ,本研究もこの問題を急遽取り上げることとなったため。
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