2009 Fiscal Year Annual Research Report
エタノール需要拡大が米国トウモロコシ農業の構造と地域経済に与える影響の研究
Project/Area Number |
21580273
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
磯田 宏 Kyushu University, 大学院・農学研究院, 准教授 (00193392)
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Keywords | 農業経済学 / 米国農業 / コーンベルト / バイオエタノール / 農業構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は米国を対象として,第一にトウモロコシ需要の急増と価格上昇が主産地農業の経営と構造に与える影響,第二に種々の企業所有形態をとるエタノール工場が原料供給農業者および農村地域経済に与える影響を,明らかにすることにある。本年度の調査・分析によって,1.ガソリンへの含酸素燃料添加剤のMTBEからコーンエタノールへの急激な需要シフト,2005年エネルギー政策法でコーンエタノール等の使用量を義務づけた再生可能燃料基準(RFS)が設定されたこと,およびガソリン価格の継続的上昇という要因によって,2005~2006年にエタノールの需要と価格が急上昇してコーンエタノール製造業の収益性が極めて高まり工場の新設・拡張が急速に進んだこと,2.2007年エネルギー法でコーンエタンール使用量義務がさらに拡大されたが,好況時に拡張された製造潜在能力は既に過剰状態に陥ってエタノール価格が低下・軟調に転じ,一方最大コスト要因であるトウモロコシ価格と天然ガス価格(原油価格に連動)が劇的に高騰したためエタノール産業の収益性は急速に悪化し2008年夏~2009年夏には損益ゼロないしマイナスに陥ったこと,3.アイオワ州の調査対象エタノール企業(LLC型および農協型)においても創業時から2007年度までは高い利益を上げて出資者(農業生産者および地元住民等)に高い配当を行なったが,その後は経常利益がゼロないしマイナスとなって無配当に陥っていること,4.それらメーカーに原料供給している農業者は基本的に2006年末以降のトウモロコシ価格上昇の恩恵を受けて販売所得が急増し規模拡大意欲も強まっていること,エタノール企業への出資は2007年度までの高配当で相当程度回収していること,5.立地場所の地域経済は若干の雇用創出効果を得たが減免税等の「誘致投資」も多額に上っていること等,重要な諸関係が明らかとなった。
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