2011 Fiscal Year Annual Research Report
エタノール需要拡大が米国トウモロコシ農業の構造と地域経済に与える影響の研究
Project/Area Number |
21580273
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
磯田 宏 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (00193392)
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Keywords | 農業経済学 / アメリカ農業 / トウモロコシ / バイオエタノール / 農業構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は米国を対象として,第一にバイオエタノール生産拡大によるトウモロコシ需要急増が主産地農業に与える影響,第二にエタノール企業が原料供給農業者と地域経済に与える影響を明らかにすることであった。3ヵ年の調査・分析によって明らかになったことは以下のとおりである。1.ガソリンへの含酸素燃料添加剤政策,2005年および2007年エネルギー政策法による再生可能燃料基準(RFS)によって人為的にコーンエタノール需要が創出され,トウモロコシ価格高騰のファンダメンタルズ要因となった。2.コーンエタノール産業は急激に拡張したために過剰生産能力を生み出して燃料エタノール価格は低下し,逆にトウモロコシ価格は2006年以降急騰・高原状態化したため,同産業の収益性は低下し,企業間格差が生まれた。3.その結果,LLC型エタノール企業に出資している農業者・農村住民への配当は2006年以降多くのケースで停止し,その面からの地域経済への貢献は中断している。4.他方,トウモロコシ需要拡大と価格上昇は,(1)コーンベルトでのトウモロコシ拡大と大豆縮小,大平原部でのトウモロコシ・大豆の西進および小麦等伝統的作物の縮小をもたらした。(2)当該地域の専業的穀作農業経営はトウモロコシ,大豆価格の急騰・高原状態化に刺激されて著しい規模拡大を進め,経営耕地面積8,000haに及ぶメガファームが登場している。同時に規模拡大に必要な農業機器大型化・追加投資,上昇する地代・地価を負担しうる経営とそうでない経営との分化が進展した。(3)大平原部へのトウモロコシ・大豆作付の拡大および経営規模拡大は,土壌水分保持,春作業農繁期軽減,土壌流亡最小化,面積当たり費用削減を目的とする不耕起・最小耕起法の普及と併進している。しかし除草対策はもっぱらグリホサート系除草剤とそれへの耐性GMOの利用に依存し,農法上の課題を残している。(4)膨大化した農場資産の世代的継承問題も重大化しつつある。
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Research Products
(1 results)