2011 Fiscal Year Annual Research Report
農業経営の法人化における法制度上の問題点に関する研究
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21580280
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
木原 高治 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (50234331)
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Keywords | 法人制度 / 法人格 / 継続事業体 / 法人成り / 原始一人会社 / 会社訴訟 |
Research Abstract |
本年度は、農業経営の法人化に関する法制度上の問題点について理論的な研究を行った。 法人制度の一般的な意義は、団体に法人格を付与することにより、当該団体に法的主体性を与え、取引関係を明確化するとともに、その永続性を保証することにある。したがって、営利企業の法人化の意義は、当該企業の権利義務関係を明確かつ単純化し、継続事業体(ゴーイング・コンサーン)として事業を展開しうることを保証するところにある。 農業経営の法人化の場合も、農業経営を一つの営利事業として観念すれば、当該事業体の権利義務関係を明確かつ単純化し、生命による制限を受けない継続的事業体として事業を存続させることができるところにその意義を見出すことができる。 しかしながら、法人化された農業法人の多くは、いわゆる個人企業の法人成りと同じく、個人農家の法人成りに近い状況である。個人農家の法人成りは事実上の個人が法人格を取得することに等しい。そのこと自体は、いわゆる原始一人会社が会社法上認められている現行会社法上においては、問題はない。 私見では、原始一人会社の承認は、国際的動向であるとはいえ、事実上、自然人たる個人が法人格を取得することは、法人格が団体における権利義務関係の簡素化を目的としていたことを考えると、本来の法人の理念との齟齬があるようにおもわれる。また、わが国の会社訴訟の多くが法人成りした個人企業におけるものであることを考えると、農業経営の法人化の促進は、会社訴訟の増加につながりかねない。 農業経営の法人化は、農業経営者に対して経営上の大きなモチベーションを付与することにつながると思われるので、その促進が図られるべきであると思われるが、そのために、農地法を介して会社法上の企業形態を単純に選択させることには少なからず問題がある。農業協同組合法で農事組合法人を認めているように、社会的な視点を含んだ形で、農業経営の為の新たな法人形態を立法することが適切であると思われる。
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Research Products
(5 results)