2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21580281
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
盛田 清秀 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80318386)
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Keywords | 農地制度 / 農業構造 / 国際比較 |
Research Abstract |
世界の農業のタイプを3タイプ(類型)に分けて構造問題を考察することがかのうであり、有効である。こうしたタイプ分け(類型区分)の基準は二つである。一つは歴史であり、東アジアやヨーロッパでは「歴史」があり、農業及び農村は長い時間の中で形作られてきた。ところが、アメリカやオーストラリアのような新大陸は別で、ヨーロッパからの移民(植民)が、「誰もいない(と見なされた)」土地を、多くは政府の後押しで囲い込み、当時及び将来の必要性の見通しに基づき広大な土地を囲い込んで「大農場」を形成した。その結果が新大陸型農業の「大規模性」をもたらした。これは、旧大陸では望めない歴史である。これが第一の類型化(新大陸型農業と旧大陸型農業の区分)基準である。 第二の基準は、自然、とくに気象条件である。ヨーロッパの経営規模が東アジアより大きいのは、ヨーロッパ農業の土地生産力がアジアより劣っていたからである。例えば、18~19世紀ヨーロッパでは播種量の5倍程度の収量があればよいとされていたのに対し、日本の江戸時代の中田(中程度の水田)では40倍程度であった。このような生産力の違いは、経営規模の違いをもたらす。家族を養い、年貢ないし租税を支払い生計を維持するためには、ヨーロッパでは日本よりも大きな面積の農地を必要とする。さらに、日本のようなアジアモンスーンでは、夏の高温多雨のゆえに植物の生長力は大きく、作物よりも成長の早い雑草との闘いに勝利しなければ収穫は望めない。除草剤もなく機械による除草も望めない時代では、人力による雑草駆除しか途はない。したがって大規模化すれば除草は追いつかず、かえって収穫が減ることにもつながりかねない。およそこういった事情により、ヨーロッパと東アジアの農業規模の格差が成立する。こうした規模格差がそのまま近代に持ち越され、構造の違いとなった。
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Research Products
(5 results)