2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21580283
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
川手 督也 Nihon University, 生物資源科学部, 准教授 (80355263)
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Keywords | 女性の位置づけ / 経営発展 / 政策的支援 |
Research Abstract |
日本における女性の位置づけと農業経営発展との関係に関する実態調査については、家族社会学や一般組織論の枠組みを援用しつつ、家族構成員のライフコースと経営の展開過程について、経営内の(1)意思決定、(2)役割分担、(3)経営成果の配分、(4)経営資源の帰属の4つの要素に着目し、大規模稲作複合経営等を対象としてケーススタディを試みた。その結果、4つの要素のうち、特に(1)と(2)において、意思決定における経営主の妻の参画が進み、責任分担が確立されると、経営改善にプラスに働くことが把握された。今後、策定したフレームワークの改良を図り、ケーススタディの数を増やして検証を行いつつ、女性の位置づけの改善が経営発展に寄与するメカニズムや条件の解明が必要とされる。 海外諸外国における女性農業者に関する法制度等政策的支援に関する情報収集および女性の位置づけと経営発展に関する実態把握については、オーストラリアと韓国を対象として実施した。ともに女性農業者の位置づけについては日本同様問題とされ、改善に向けた政策的支援が試みられているが、オーストラリアでは、代表的な作目の畜産や畑作経営の場合、大規模化や機械化等の進展に伴い女性の農業生産への関与は一般に小さく、パートナーシップ契約の締結等は女性の財産権等の確立には寄与するが、経営発展との関連については見いだすことができなかった。これに対して、韓国においては、農業をめぐる状況は日本と近く、女性の農業生産への関与も大きい。そのため、女性の位置づけの改善が経営改善にプラスに働く可能性が指摘できる。韓国では、政策的支援として日本の家族経営協定の推進に取り組みはじめており、大変注目される。しかし、ここで得られた知見は、資料や専門家から得た間接的なものやきわめて少数のケーススダディから導き出されたものであり、今後、慎重な検証が必要とされる。
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