2011 Fiscal Year Annual Research Report
疑似パネルデータ利用によるインドネシアとタイ農家家計の貧困要因の比較研究
Project/Area Number |
21580284
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
新谷 正彦 西南学院大学, 経済学部, 教授 (70069706)
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Keywords | 経済事情 / 国際農業 / 擬似パネルデータ |
Research Abstract |
1990年より2006年にいたる2年毎と2007年とに調査されたタイの社会経済調査の個別結果表を用いて研究を進めた。まず、各調査年の個別結果表を用いて、所得格差の主要因が人的資本の蓄積の差、すなわち、教育格差にあることを明らかにした。そして、識別問題を回避するために、教育年数関数を各調査年について計測し、教育関数より指定されるサンプルの教育年数を用いて、ミンサー型賃金関数を修正した賃金所得関数を計測し、その計測結果を用いて、調査各年について、都市農村別男女別教育水準別に、教育投資の収益率を推定した。教育投資の収益率の推定結果は、教育水準の上昇とともに上昇し、それらは都市農村問および男女間に大きな差異が無い点を明らかにした。そして、女子への教育投資は、男女間の賃金所得格差の解消に、また、農村部の男女に対する教育投資は、都市農村間の賃金所得格差の解消につながることを明らかにした。これらの結果は、調査各年のデータを用いて、操作変数方による賃金所得関数の計測によって確認された。そして、男子に対する女子の、また都市部に対する農村部の教育投資の収益率が遜色ないにもかかわらず、女子の、また農村部の人的資本の蓄積の小さい点を、教育投資の資本制限の存在として把握し、プロビット関数の計測によってそれを確認した。加えて、賃金所得格差の原因を、学歴の世代間連鎖から貧困の世代間連鎖、すなわち、親が高学歴であればその賃金所得が高く、その子供は高学歴で、かつその賃金所得が高く、親が低学歴であればその賃金所得が低く、その子供は低学歴で、かつその賃金所得が低いという連鎖として把握し、その存在を記述統計と多項ロジットモデルの計測とによって、統計的に明らかにした。したがって、学歴の世代間連鎖を断ち切れば、貧困の連鎖を断ち切ることができることになり、その政策提言を行った。最後に、女子高等教育投資の効果について、トリートメント効果を組み込んだ賃金所得関数の計測によって明らかにした。これらの成果は、『タイ国マイクロデータ利用による教育投資の収益率推定に関する研究-所得格差是正に向けての要因分析-』(西南学院大学研究叢書、No.40、2012年)に発表された。
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Research Products
(1 results)