Research Abstract |
1.日本の多くの地方都市では,スプロール化によって市街地が拡大してきた。しかし,現在,人口減少・少子高齢化が進む地方都市では,環境や財政の観点から,緑地の配置を含めてラーバンエリアのあり方を再検討することが必要である。一方,中国の地方都市では,今後も進む無秩序なスプロール化を抑制しながら,環境に配慮したラーバンエリアのあり方を模索する必要がある。 2.今年度,土地利用の変容と地区別の生活の質について詳細に検討した。土地利用では,とくに生態系,景観の視点から緑地分布の変容を調べて,スプロール化との関連を検討した。日本の地方都市では,安曇野市を対象に複数年における緑地の連続性を地区ごとに分析し,指数CONと緑被パッチ指標を用いて緑地変容の評価を行った。その結果,とくに工場の誘致がスプロール化の誘因となり,緑地の分断および孤立化に至っていることがわかった。中国の地方都市では,河北省廊坊市を対象に同様の分析を行った結果,計画性のないスプロール化により著しい緑地の減少に至っていることがわかった。生活の質では,同じく安曇野市および廊坊市を対象として,地区の生活環境についてアンケート調査を行い,地区ごとに生活環境の満足度を求め,GISを用いて地区別に生活環境を比較した。さらに,CS分析により生活環境の重要度と満足度の関係を把握した。このCS分析で求めた重要度を用いた多基準評価手法により生活環境の評価を統合して,地区別の生活環境の改善に向けた指標を検討した。その結果,利便性と快適性が住み心地に対して重要であること,とくにラーバンエリアにおける快適性の満足度は高いが,利便性の満足度は低く改善の余地があることなどがわかった。今後,環境に配慮した持続性のあるラーバンエリアの計画策定に向けて,土地利用と生活の質との関連性が明らかになり,地区ごとの今後のまちづくりに対する方向性が見出された。
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