Research Abstract |
塩類集積は,乾燥地/半乾燥地の至るところで大きな問題となっている.初期段階における塩類集積はごく表層にスポット状に集積する場合が多い.本研究では,この事実に着目し,土壌に少量の水分を供給し,集積塩を溶解させた土壌水を表層から吸引することで塩を除去する表層吸引溶脱法を開発し,節水型の除塩技術の確立を目指している. 昨年度の実験で,吸引力の強い土壌の場合,給水が部分的にしか行われず除塩効果が限定的になることが明らかとなった.これを踏まえ,挿入部のフィルターに吸湿性スポンジ,不織布を使用したが,回収水量が小さく損失水量が大きくなった.そこで,フィルターは変えずに運転条件を変更した結果,給水フラックスを小さくし給水時間を長くすることで対処可能であることが明らかとなった.また,排水中の塩濃度は2サイクル目で最大となり,3サイクル目から減少に転じ,その時点での積算回収塩量は総回収塩量の53%に達することが確認できた.塩の回収率が80%に達するのは105サイクル目であり,そのときまでの積算回収水量は総回収水量の50%に相当した.このことから,本法は所定量の半分で総回収塩量の80%を取り除いており,透水性の高い塩害土壌ではさらに節水的な除塩が可能であることが明らかとなった. 実用化実験として,乾燥条件下で自然発生させた塩析出土壌と東日本大震災の津波被害で発生した塩害農地の不撹乱土壌に対する除塩実験を実施した.いずれの場合も回収水量は供給総水量の90%以上となり,節水的な除塩が可能となったが,表層塩の回収率はそれぞれ60,61%と低率にとどまった.これは析出塩の溶解に時間を要することと,粘土分の多い土壌に対する本装置の効率的な運転が行われていないためと考察された.以上の結果から,本法は室内実験レベルでは十分な性ようを有するが,実用化のためにはさらになる改良が必要であることが明らかとなった.
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