2012 Fiscal Year Annual Research Report
アジアモンスーン地域における農業生産域からの大腸菌および肥料成分の流出抑制対策
Project/Area Number |
21580301
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
三原 真智人 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (00256645)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境調和型農林水産 / 水質汚濁・土壌汚染防止・浄化 / 大腸菌 / 流出抑制対策 |
Research Abstract |
農林水産省が2009年に行った推計によると、日本では年間約8700万トンの家畜糞尿が排出されており、その6割が牛糞であると試算されている。これら有機廃棄物の処理方法として、堆肥化が資源循環の視点から注目されている。しかし、堆肥の増産はE.coli(大腸菌)などの人体に健康被害をもたらす菌が大量に生存している未熟堆肥の増加を招く可能性があると指摘されている。これら未熟堆肥を農地に施用した場合、降雨等に伴って下流域に流出することが懸念される。そのため堆肥化過程におけるE.coliの抑制技術が求められてきた。その方法の一つとしてpH調整が挙げられる。既往の研究において、堆肥をpH 12.0付近に調整することでE.coliを殺菌することが出来たが、堆肥化に必要な一般細菌も減少したと報告されている。一方、pHを弱アルカリ性である8~9に調整することは堆肥化に最適であるとの報告もある。 そこで、E.coliの生育限界はpH 9.0であることから、堆肥のpH 9.0付近に調整することで、一般細菌に影響を与えることなくE.coliを抑制できるのではないかと考えた。平成24年度においては、牛糞堆肥に石灰窒素、焼成ホタテ貝殻粉末(HSSP)を添加することでpHを9.0に調整し、微生物相の変化を調べることを中心的課題とした。 実験では東京農業大学富士畜産農場にて採取した牛糞と、牛糞を2週間発酵させた一次発酵堆肥を使用した。試料中のE.coli、大腸菌群数を測定したところ、石灰窒素、HSSP共に、発酵段階に関わらず、添加直後にE.coli、大腸菌群が減少した。また、分散分析の結果、有意差が見られた。このことから、堆肥のpH調整はE.coli、大腸菌群の抑制に一定の効果があると考察した。一方、堆肥化に寄与する一般細菌について見てみると、添加物や発酵段階の違いに関わらず、大きな変化は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画では、大腸菌の下流域への流出抑制を目指した保全対策の検討として、家畜糞尿における発酵過程の温度管理、ペレット化処理、ph調整、施肥前の風乾処理等のきゅう肥中の大腸菌数を削減する保全対策ついての検討を継続するとともに、畑地で発生した大腸菌の流出を抑制できる保全対策についても研究を継続することであった。ペレット化処理を除いて、ほぼ当初の計画通り研究を推進できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、大腸菌の下流域への流出抑制を目指した保全対策について検討を進めていく。特に、大腸菌の流出抑制を目指したきゅう肥のペレット化技術を軸に研究を進めていきたい。きゅう肥の密度は土壌粒子に比べて小さく、表面流去水や降雨に伴って容易に下流域に流出してしまうため、ペレット化は水質汚濁の面源とされる畑地からの流出負荷を減少できる保全対策と期待されている。きゅう肥と糖蜜等の接合材との適切な配合割合に基づいたきゅう肥のペレット化技術について検討していく必要がある。
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Research Products
(10 results)