Research Abstract |
土壌が有する炭素隔離機能は,耕うん体系と密接に関係している.耕うん体系の違いが、土壌団粒の形成ならびに腐植の化学形態をどのように変化させるのかについてはよく分かっていない.土壌の炭素隔離機能について,土壌の物理的攪乱が大きい全面耕うんや,物理性の攪乱が少なくかつ生物多様性を維持できる局所耕うんなどと関連付けて新たな知見を得ることが重要になる.生物多様性を維持した保全耕うん圃場では、物理的に安定した微小団粒の発達が認められ、有機物分解を遅延させるという報告を受けて,保全耕うんの炭素隔離機能を,より正確に定量・定性的に評価することを目的として実験を行ってきた. 今年度は昨年度得られた三つの知見を基に提案と改善を行い最終目標の分解過程のモデル化には到達しなかったものの新たな知見が得られた. まず,分析方法の提案として,保全耕うん圃場は一般的に耕うん回数や耕うん面積が少ないことから,圃場の表層部分に残さの堆積があり,分解は残さの下層ほど進行していることが予想されることから,表層から5cmの不攪乱のサンプリング土壌を,さらに深さ方向で1cmずつ切断し,深さ毎に団粒分析を行い,さちに,直径別にふるい分けされた直径の異なる団粒毎に有機物含有量(強熱減量)を調べた.そして,保全耕うん隣接の全面耕うんを施した対象区の他に,雨よけ栽培の果樹園,茶園,普通畑と比較した.その結果,保全耕うんでは,、団粒の形成傾向が高いことが認められたが,大きい団粒径の土壌ほど有機物含有量は少なかった.この傾向は他のすべての試験区と異なっていた. 提案としては,土壌粒子に赤外光の透過を妨げられ,ノイズのために測定が困難であったサンプルに対し,反射式のFTIR分析装置(ALPHA-PダイヤモンドATR付)を使うことを提案し,分析を行ろたところ,装置の有効性が確認され,その結果,以下の結果が得られた. 有機物の分解過程の指標として用いてきた,官能基の吸光度の比,アロマティック/アミド,アロマティック/アリファティックの傾向が,保全耕うん区(局所耕うん区)のみ異なっていた点で,団粒構造中の有機物含有量の差と併せて,団粒構造形成のメカニズムの究明,炭素隔離機能評価へとつなげたい。
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