2009 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ初乳カッパカゼインの強力なヒトロタウイルス感染阻害作用の分子基盤
Project/Area Number |
21580325
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
金丸 義敬 Gifu University, 応用生物科学部, 教授 (50111795)
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Keywords | ロタウイルス / カッパカゼイン / 牛乳 / 腸管感染症 / 食品 / 糖鎖 |
Research Abstract |
ヒトロタウイルスは乳幼児下痢症の主因ウイルスであり、発展途上国を中心に年間60万の死者が出ている。申請者らのこれまでの研究から、ウシ初乳カッパカゼイン(κ-CN)がヒトロタウイルス感染を強力に阻害することが示唆されている。本研究では、ウシ初乳カゼインの効果の確認に重点を置き、ウシ初乳および常乳に含まれるκ-CNを単離し、中和活性試験法により阻害活性を評価することを目的とした。また我が国では分娩後5日目以内の初乳の出荷が乳等省令によって禁じられていることから、本年度の研究では実用化の見地から分娩後6,7日目の初乳(後期初乳)について、乳飲みマウスモデルを用いた初乳の予防機能評価を行った。 ウシ初乳および常乳から定法に従って調製したカゼインフラクション(CN)について二次元電気泳動で解析した。IgG抗体の存在が指摘されたことから、CNをProtein Gアフィニティーカラムに供し、IgG除去を試みた。その結果得られた初乳および常乳の精製CNについて中和活性試験を行ったところ、初乳CNは常乳CNよりも約5倍程度強い阻害活性を示した(50%阻害を示すために必要なタンパク質濃度(MIC):初乳CN16μg/ml,常乳CN72μg/ml)。さらに陰イオン交換Mono Qカラムを用いて分画し、精製CNからκ-CNを単離し活性評価を行ったところ、初乳κ-CNは常乳κ-CNと比べて強い阻害活性を示した(MIC:初乳κ-CN0.02μg/ml,常乳κ-CN9μg/ml)。単離κ-CNの活性に及ぼすプロテアーゼ消化及び加熱の影響については現在検討中である。 後期初乳について、乳飲みマウスを用いた下痢予防効果試験を行った。出生5日目の乳飲みマウスにヒトロタウイルスMO株を接種し(実験0日目)、このウイルス接種1時間前に後期初乳(50μl)を投与した。その結果、生理食塩水(50μl)投与群と比較して、後期初乳群では下痢の発症の有意な低下を認めた。
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