2011 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ初乳カッパカゼインの強力なヒトロタウイルス感染阻害作用の分子基盤
Project/Area Number |
21580325
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
金丸 義敬 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (50111795)
|
Keywords | ロタウイルス / カッパカゼイン / 牛乳 / 糖鎖 / 腸管感染症 / PNAレクチン |
Research Abstract |
ヒトロタウイルスは乳幼児下痢症の主因である。申請者はこれまでに、分娩後6,7日目の初乳(後期初乳)に含まれるκ-CNがヒトロタウイルス感染を強力に阻害し、その活性は常乳κ-CNのものと比べ約100倍高いことを明らかにしてきた。この後期初乳および常乳のκ-CNが示す阻害活性は、加熱処理およびトリプシン処理に耐性という特徴を持つことから、κ-CNの示す感染阻害活性に修飾糖鎖が関与する可能性が指摘されている。本研究では、常乳κ-CNと比較することで、後期初乳κ-CNが示す強力なヒトロタウイルス感染阻害作用の発現に不可欠な分子構造の解明を目指した。 定法に従って後期初乳および常乳からカゼイン(CN)を調製後、Protein G固定化カラムによるアフィニティークロマトグラフィーを用いて混入するIgG抗体を除去した。次に、抗体除去CNをトリプシン消化し、O結合型糖鎖のGalβ1-3GalNAcと特異的に結合するレクチンであるPNAを固定化したカラムに供して、κ-CN由来糖ペプチドを分取した。分取した後期初乳および常乳κ-CN由来糖ペプチドに感染阻害活性が認められたことから、κ-CNの感染阻害活性は糖ペプチド部分に起因することが示唆された。さらに、後期初乳および常乳κ-CN糖ペプチドについて、酵素処理によるO結合型糖鎖除去の活性への影響を調べたところ、O結合型糖鎖除去により活性は完全に消失することが示された。 さらに後期初乳および常乳のκ-CNの糖鎖構造の解析を行った。後期初乳および常乳CNからβ脱離によりO型糖鎖を遊離させ2 Aminobenzoic Acid標識化を行った後、Amide-80カラムを用いたNP-HPLCにより分析した。常乳κ-CNはDisialyl-Tをメインとするコア1糖鎖(Galβ1-3GalNAc)が中心の糖鎖プロファイルであり、後期初乳κ-CNはDisialyl-Tの比率が低下し、コア2糖鎖(Galβ1-3(GlcNAcβ1-6)GalNAc)の比率が増加していた。以上より、ヒトロタウイルスがκ-CNの糖鎖構造を認識して結合することを通して感染阻害作用が発現され、後期初乳および常乳κ-CNが示す活性の相違には、それぞれの修飾糖鎖構造の違いが反映されていることが示された。
|