2009 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物の胎盤を介した植物エストロゲンの作用機序の解明
Project/Area Number |
21580328
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久米 新一 Kyoto University, 大学院・農学研究科, 教授 (90355454)
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Keywords | 植物エストロゲン / 新生仔マウス / 胎盤 / 哺乳動物 / 腸管免疫 |
Research Abstract |
マメ科草は家畜に不妊などの害をもたらす植物エストロゲンを多量含有しているが、植物エストロゲンは母体の胎盤を介して新生児の健康状態を改善することも期待できる。そこで、本年度は家畜のモデル動物として妊娠マウスを用いて、植物エストロゲンの一つであるクメステロールを経口投与(200μg/kg体重/日)し、妊娠マウスとその胎仔・新生仔マウスのエストロゲン受容体などを介した植物エストロゲンのカルシウム代謝に及ぼす作用機序について調べた。その結果、妊娠期におけるクメステロール投与により、妊娠マウスでは妊娠末期に十二指腸と空腸におけるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の低下およびALPとエストロゲン誘導遺伝子(c-fos、 VEGF)のmRNA発現量の低下が認められたが、分娩10日後にはその影響はほとんどなかったことを明らかにした。それに対して、胎存・新生仔マウスでは母体の胎盤を介した植物エストロゲンの影響は認められなかった。これらの結果から、妊娠末期のマウスは血中エストロゲン濃度が非常に高いことが知られているため、植物エストロゲン投与により妊娠マウスのエストロゲン暴露をさらに高めると、妊娠マウスでは小腸におげるALP活性の低下を介してカルシウム代謝に拮抗作用を及ぼすものの、胎児のカルシウム代謝への悪影響は胎盤で防御されることが示唆された。また、今回の投与量は厚生労働省推奨のイソフラボン上限摂取量(30mg)の半分以下に設定したが、マウスのエストロゲンの状態によって、植物エストロゲンの動物の生理機能に及ぼす影響が異なることを見出したことに意義がある。
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