2009 Fiscal Year Annual Research Report
野草地の放牧利用が植生構造の空間的多様化と採餌環境のエンリッチメントに及ぼす影響
Project/Area Number |
21580336
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 智伸 Tokai University, 農学部, 教授 (70248607)
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Keywords | 野草地 / 半自然草原 / 放牧 / 生物多様性 / 空間的不均一性 / 阿蘇 / 環境エンリッチメント / 採餌環境 |
Research Abstract |
放牧利用が植生構造の空間的多様化に及ぼす影響を検討するため,放牧の影響を除外し空間的に均一な剪葉を行った均一刈取り区と全く剪葉を行わない未利用区との間で植物量,植物種組成,土壌の肥沃度などについて比較した。 地上部乾物生産量は放牧区と均一刈取り区においてほぼ同等で,未利用区の乾物生産量は両区よりも多かった。また,放棄年数の経過とともに乾物生産量は増加する傾向にあった。乾物生産量のトランセクト上の変動係数は,放牧区よりも,均一刈取り区,さらには未利用区が低い傾向にあった。放牧区においては他区に比べてトランセクト上の草量分布の類似度は経時的に大きく変動せず,高く維持される傾向にあった。一方,均一刈取り区および未利用区においてその類似度は経時的に大きく変動した。特に未利用区においては経時的に低下する傾向にあった。 植物種の出現種数は放牧区と均一刈取り区では大きな差は認められなかったが,未利用区では両区よりも有意に低かった。各区ともにネザサの優占度が高く,本種の空間分布の変動係数は低かった。特に未利用区ではネザサの優占度が著しく高く,その空間的変動も区間中最も低かった。放牧区ではシバやトダシバの優占度も高く,これらの種の空間的変動も低かった。一方,放牧区において優占度の空間的変動が高い種としてテリハノイバラ,チカラシバなどが認められた。均一刈取り区と未利用区ではススキやチガヤなどにおいて優占度の空間的変動が大きかった。 放牧区における表土の強熱減量および電気伝導度は,刈取り区および禁牧区よりもそれぞれ空間変動が大きかった。また,放牧区における草生産量と土壌肥沃度との間の相関係数は,均一刈取り区および禁牧区よりもそれぞれ大きかった。 今後,植物量,植物種組成,土壌環境要因の動態を総合的に解析し放牧利用により植生構造が空間的に変動する機序を明らかにしていく必要がある。
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