2010 Fiscal Year Annual Research Report
野草地の放牧利用が植生構造の空間的多様化と採餌環境のエンリッチメントに及ぼす影響
Project/Area Number |
21580336
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 智伸 東海大学, 農学部, 教授 (70248607)
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Keywords | 半自然草原 / 放牧 / 生物多様性 / 空間的不均一性 / 阿蘇地域 / 環境エンリッチメント / 採餌環境 |
Research Abstract |
野草地の放牧条件下での植物種組成の空間的変動の機序を解明するため,禁牧処理を施した場合と比較し検討した。 禁牧した場合,各方形区における出現種数は経年的に減少する傾向にあり,種組成も大きく移り変わった。ネザサは禁牧した期間を通じて優占種であり,その優占度は禁牧に伴い増加する傾向にあった。ススキとチガヤも同様に増加したが,禁牧5年目の優占度はそれぞれネザサの8割および3割程度であった。トダシバおよびシバの優占度はそれぞれ経年的に減少した。チカラシバの優占度は禁牧2年目まで増加し,その後減少した。 出現種の空間変動の指標として,各出現種における優占度の方形区間平均値と分散の間で得られた回帰直線から分散を推定し,実測した分散値と比較した。優占度における方形区間の実測分散値が推定した分散値に比較して有意に大きい種として,禁牧1年目ではネコハギやヤマイなど9種が認められたが,禁牧2年目からはチガヤやススキなどの8種となり,禁牧3年目にはススキ,チガヤおよびチカラシバの3種となった。分散の実測値と推定値間の差は,チカラシバにおいて禁牧4年目より,チガヤにおいては禁牧5年目でそれぞれ認められなくなり,禁牧5年目で分散の実測値が推定値よりも有意に大きい種はススキのみとなった。一方,ネザサにおいて分散の実測値は推定値よりも調査期間を通じて有意に小さく,禁牧の経過に伴い分散の実測/推定値の比率は低下する傾向にあった。 このように禁牧年数の経過とともにネザサの優占度は増加し,植物種組成が空間的に均一化していく傾向が見られた。 野草地
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