2011 Fiscal Year Annual Research Report
野草地の放牧利用が植生構造の空間的多様化と採餌環境のエンリッチメントに及ぼす影響
Project/Area Number |
21580336
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 智伸 東海大学, 農学部, 教授 (70248607)
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Keywords | 野草地 / 半自然草地 / 放牧 / 生物多様性 / 空間分布 / 阿蘇 / 環境エンリッチメント / 採餌環境 |
Research Abstract |
放牧利用が野草地の植生構造の空間的多様化に及ぼす影響を検討するため,放牧の影響を除外し空間的に均一な剪葉を行った均一刈取り区と禁牧処理を行った未利用区との問で地上部現存量,植物種組成などについて空間的変動の経時的変化を比較した。また,放牧区における飼料成分の空間的変動および放牧家畜の食草行動についても検討した。 乾物現存量の空間分布の二時期間における類似性は放牧区において,均一刈取り区および未利用区よりも高かく,放牧区では現存量の空間分布が経時的に維持され易いと考えられた。しかしながら,7年間の観察において,その類似性は低下する傾向にあり,長期的には現存量の空間分布パターンは変動していた。 放牧区ではネザサ,シバおよびトダシバの優占度が高く,これらの空間的変動も低かった。一方,優占度の空間分布における実測した分散値が優占度から推定される分散値に比較して有意に大きい種として,放牧区においてはテリハノイバラ,チカラシバなどが,均一刈取り区と未利用区ではススキ,チガヤなどがそれぞれ認められた。特に未利用区においては禁牧後経年的にススキ優占度の空間的変動が高まった。一方,禁牧後ネザサ優占度の空間分布における分散の実測/推定値の比率は低下する傾向にあった。 放牧区における可食部草の粗タンパク質含有率や繊維含有率など飼料成分の空間的変動は比較的少なく,ウシの食草速度と飼料成分との間に相関は認められなかった。一方で,草丈や優占種が異なる植生間において食草速度に差が認められた。 野草地を放牧利用した場合,植生構造は空間的に多様化し経時的に緩やかに変化していくことが推察された。また,この植生構造の空間的変動は食草行動にも影響を及ぼし,採餌環境の複雑化につながっていると考えられた。
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