2011 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ骨格筋におけるミオスタチンの有無が筋紡錘の分布と形態に及ぼす影響
Project/Area Number |
21580341
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邊 康一 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (80261494)
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Keywords | 筋線維型 / 筋紡錘 / ミオスタチン / 筋運動制御 / ウシ / カルパイン |
Research Abstract |
前年度末に発生した東日本大震災により凍結筋材料と組織プレパラートが失われたため、本年度は草原短角牛の固定組織標本と生検組織を用いて,筋紡錘と筋収縮制御機構の関連について解析することを目指した。 しかし,ミオスタチン欠損形質を持つ草原短角牛の生産牧場である宮城県農業公社牡鹿牧場(宮城県石巻市)が震災被災し,試験に供する新たな試験牛の確保がかなわず,草原短角牛とミオスタチン欠損と筋紡錘との関連を検証するに至らなかった。さらに,固定筋標本においては,当初予定していた筋紡錘の紡錘内筋線維の組織化学的特徴である極めて強いNADH脱水素酵素活性を検出することができず,筋紡錘の位置同定が困難であった。また免疫組織化学染色も長期固定に伴う抗原性低下のため不調であり,3次元再構築には新たな手法の開発が必要となり完遂に至ることができなかった。 一方,ウシ骨格筋でミオスタチンmRNA発現はII型筋線維の多い速筋において高く,I型筋線維の多い遅筋では発現が低いという特性が,それぞれの筋由来の培養筋細胞レベルでも維持されていることを見出した。骨格筋への低周波電気刺激によってミオスタチンが発現低下することは代表者らがすでに明らかにしているが,本成果により,筋線維型依存的ミオスタチン発現調節機構の存在と筋線維の機能的適応との関連が強く示唆された。 加えて,ウシ骨格筋への持続的低周波電気刺激によってII型筋線維をI型筋線維へ移行させた時,ミオシン重鎖亜型のFast-to-Slow変移に先んじて,カルシウムイオン依存型プロテアーゼであるカルパイン1の発現上昇が起こることを見出した。持続的な筋運動の開始によって筋線維内に多量のカルシウムイオンが放出され,カルパイン分解系が活性化することが筋線維型移行に重要な要因となることが示唆された。
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