2010 Fiscal Year Annual Research Report
現象と発現の両解析法によって解明する家畜・家禽の味覚受容機構
Project/Area Number |
21580363
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田畑 正志 九州大学, 農学研究院, 教授 (40145503)
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Keywords | ニワトリ / ガストデューシン / 味覚受容体 / T1R1 / T1R3 |
Research Abstract |
研究2年度の目的は、タンパク質レベルおよび分子レベルの発現解析と行動学的手法による現象解析であった。前者においては、研究初年度にすでに部分的に成果が得られ、前年度の成果報告書に一部記載している。両年度の成果をまとめて述べると、分子生物学的手法を用いてニワトリ味蕾組織中にT1R1およびT1R3の2種類の味覚受容体の存在を証明した。哺乳類では、T1R1とTIR3の2種類のタンパク質がヘテロダイマーを形成して、旨味(アミノ酸)受容体を形成するという。ニワトリも同様に、旨味受容体を有することが推測される。興味あることにニワトリゲノムにはTIR2遺伝子が認められない。哺乳類(マウス、ラットおよびヒト)においてTIR2タンパク質はT1R1とヘテロダイマーを形成して甘味受容遺体を形成すると言われる。ニワトリでは甘味に対する感受性が低いことを説明する系統発生学的証拠かもしれないが今後証明される必要があろう。また、抗ニワトリ-ガストデューシン抗体の作成も主な成果の一つである。分子生物学的手法で得られたニワトリ-ガストデューシンペプチドをウサギに免疫し、その血清を回収したところ、目的とする抗血清が得られた。この成果はAnimal Science Journal誌(81巻666-672, 2010)に掲載された。哺乳類と同様にガストデューシンは味蕾特異的に発現し、味覚受容機構に重要な機能を果たすG-タンパク質であることが、想像された。哺乳類においてガストデューシンは苦味の受容に機能しているという報告がなされているが、ニワトリにおいても同様に、ある特定の味質(おそらく苦味)の受容に特異的に働いていることが想像される。このことも今後の研究課題である。一方、行動学的手法を用いた現象解析によると、ニワトリは塩酸キニーネを含む水に対して忌避反応を示し、これは0.5mMの濃度から引き起こされていることが明らかになった。本成果は、Animal Science Journal誌(81巻240-244,2010)に掲載された。なお、本年度末に研究成果の発表を日本畜産学会において口頭発表予定であったが東日本大震災により中止になったことを申し添えたい。
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