2011 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルスの異種間伝播による感染拡大要因の解明とその制御
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21580374
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
前田 健 山口大学, 農学部, 教授 (90284273)
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Keywords | イヌジステンパーウイ / 野生動物 / 遺伝子型 / 動物園動物 / サイトカイン |
Research Abstract |
1)和歌山県、高知県、山口県、滋賀県での野生動物の異常の把握とCDV感染の調査の継続について 和歌山県のアライグマにおけるCDV抗体陽性率は2007年、2008年、2009年、2010年、2011年でそれぞれ60.3%、27.6%、13.9%、8.6%、15.2%、タヌキにおいては2008年、2009年、2010年、2011年でそれぞれ33.3%、23.5%、18.2%、18.5%であった。その他、イノシシで12頭、シカ、テンで2頭、アナグマ、チョウセンイタチで1頭のCDV陽性個体が見られた。和歌山県では2010年にキツネから、2011年にタヌキから新たにCDV遺伝子が検出され、それらは2007、2008年の和歌山県分離株と相同性が高かった。滋賀県においては2株のCDVがタヌキから分離され、これらは和歌山県分離株と相同性が高かった。高知県では2009-2010年に小規模の再流行が起こり、ハクビシン、アナグマ、タヌキから新たに4株のCDVが分離され、それらは系統樹上では以前高知県で分離されたCDV分離株と同じクラスターに属していた。これらの結果はCDVが各地域で独自に進化していることを示している。また、和歌山から滋賀に及ぶ広域での流行が確認された。 2)山口県のアナグマから新規遺伝子型のCDVの分離 アナグマの肺と脳からCDVが分離された。肺、脳、脾臓、リンパ節における好酸性の細胞質内封入体およびCDV抗原が確認された。ヘマグルチニン(H)遺伝子(1824bp)の塩基配列を決定した結果、アミノ酸レベルで遺伝子型America-2に属するA75/17株との相同性が94.9%で最も高く、Asia-1型とは90.3-93.2%、Asia-2型とは90.5-93.0%、America-1型とは88.7-89.4%であった。全塩基配列15690塩基の配列を決定した結果、コードされる8種類の蛋白(N,P,H,F,M,L,C,V)は全て遺伝子型America-2に相同性が最も高かった。これらの結果は、国内には第3の遺伝子型が存在することを示しており、今後も注意が必要である。 3)イヌジステンパー発症モデルのサイトカイン解析 サル由来CDV実験感染犬は強毒であることが示したが、本年度はサイトカインを網羅的に検討した。その結果、IL-2,GM-CSF,IL-17,IL-15の有意な上昇が確認されたのに対してIL-6の発現が減少していた。これらサイトカインがCDVの病態に関与している可能性が示唆された。 4)動物園動物におけるCDV感染 トラでのCDVの流行が観察されたが、過去に採取されたトラとライオンの血清を調べた結果、CDVはかなり以前からトラとライオンに感染していることが判明した。
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Research Products
(5 results)