2011 Fiscal Year Annual Research Report
ベッドサイドで可能な犬レプトスピラ症迅速検査法の開発
Project/Area Number |
21580391
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
奥田 優 山口大学, 農学部, 教授 (10325243)
|
Keywords | レプトスピラ / ラテックス凝集法 / 犬 / 人獣共通感染症 |
Research Abstract |
レプトスピラ症はLeptospira interrogansの感染に起因する人獣共通細菌感染症である。犬レプトスピラ症は時に死の転機を辿るために早期の診断および治療が求められる。しかし,レプトスピラ症の検査法として広く用いられている顕微鏡下凝集試験(MAT)は限られた検査機関でのみ実施可能であることから,仮診断は検査の結果が判明する前に行わなければならないのが現状である。そこで本研究では,臨床現場で簡便かつ迅速に実施可能な犬レプトスピラ症の新たな検査法の開発を目的として,レプトスピラの凝集抗原を解析し,その組換え蛋白を抗原としたラテックス凝集法を検討した。 まず,MATでL. interrogans serovar hebdomadisに抗体陽性であった犬レプトスピラ症3症例の血清を用いて,L. interrogans serovar hebdomadisの外膜蛋白を抗原としたWesternblot解析を行い,分子量40kDa付近にL. interrogans陽性犬の血清で認識される凝集抗原が存在していることを明らかにした。次に,LC-MS/MS解析を行い,分析の結果から得られた8種の蛋白の中からペプチドの一致率が高かったfatty acid synthase subunit beta (fas1)とhypothetical protein LICl1359(MaoC)に着目し,fas1,MaoCの組換え蛋白を抗原とするラテックスビーズを作製した。このラテックスビーズを用いた凝集法では,レプトスピラ症と診断された6症例すべての血清で凝集が確認された。一方,過去に我々の研究室で開発したL. interrogans serovar hebdomadis外膜蛋白粗抽出結合ビーズ(AkiBビーズ)で偽陽性を示した非レプトスピラ疾患4頭を含む12頭の凍結血清を用いてラテックス凝集試験を行ったところ,fas1ビーズとMaoCビーズを用いるとすべて陰性であった。以上の結果から本研究で作製したfas1,MaoCビーズは外膜蛋白粗抽出ビーズと比較して,より非特異反応が少ないビーズであることが明らかとなった。 実際の臨床応用には,犬レプトスピラ症例の検体を増やして検討を行う必要があると考えられるが,本研究で開発したラテックス凝集法は,非特異反応が低く,レプトスピラ症が疑われる症例に対して簡便かつ迅速な検査法として臨床的に有用である可能性が強く示唆された。
|