Research Abstract |
難治性病態における急性期蛋白糖鎖応答のダイナミズムの解明と糖鎖機能改変モデルの構築を目的に,急性期糖蛋白のモデルとして動物α1酸性糖蛋白(AGP)について,本年度は,1.臨床応用を目的にウシAGPのcDNAクローニングおよび実験動物モデルとしてマウスAGPのcDNAクローニング,2.ウシAGPのin vitro蛋白発現,3.ウシおよびマウスAGPに対するモノクローナル抗体の作製を実施した. 1.AGP cDNAクローニング (1)ウシ(黒毛和種)の肝細胞からtotal RNAを抽出し,RT-PCR法により遺伝子増幅を行った後,TAクローニングを実施した.その結果,ウシAGP遺伝子のcDNAを得ることができた.ウシAGP遺伝子は,翻訳領域は609塩基からなり,一部に品種の違いと考えられる変異が認められたが,既知のデータとほぼ一致しており,5つのN-glycosylation siteを有していた. (2)マウス(ICR系)では,LPS50 mgを腹腔内投与した後,肝細胞からRNAを抽出し,RT-PCR法により遺伝子増幅を行った後,TAクローニングを実施した.その結果マウスAGP遺伝子のcDNAを得ることができた.マウスAGP遺伝子の全翻訳領域は621塩基であり,部分的に系統差と考えられる変異がみられたが,Balb/cとほぼ一致していた.また,5つのN-glycosylation siteを有していた. 2.AGPのin vitro発現 ウシおよびマウスAGPcDNAについて大腸菌での蛋白発現を試みた.その結果,可溶性画分に約37kDaの蛋白が観察され,目的のチオレドキシンとの融合蛋白であると推定された.これらの蛋白を精製し,Enterokinaseによる切断とtag蛋白の除去を行ってさらに精製したところ,ウシおよびマウスAGPと考えられる約22kDaの組換え蛋白が得られた. 3.モノクローナル抗体の作製 大腸菌で発現・精製したマウスAGPならびにウシAGPを用いて常法によりモノクローナル抗体の作製を試みた.免疫にはラットを用い,フットパッドに注射し,膝下リンパ節を回収して細胞融合を行った.また血清から精製したウシAGPも抗原として用いた.その結果,マウスAGPに対しては5種のモノクローナル抗体が得られ,2種類以上のエピトープを認識する可能性が示唆された.ウシでは8種のモノクローナル抗体が得られ,血清AGPに対して4種(マウス2種,ラット2種),大腸菌発現AGPに対して4種(ラット)が得られ,異なるエピトープを認識する可能性が示唆された.
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