Research Abstract |
今年度,本課題においては,以下の2つの作業に取りかかった。第1に,国内外におけるバイオ燃料持続可能性基準策定の議論を整理した。現在,GBEP(世界バイオエネルギー・パートナーシップ)においては,環境,社会,経済およびエネルギー安全保障の3つの柱立てを基礎に,バイオ燃料の持続可能性指標の選定作業が行われている。本課題では,GBEPにおいては具体的にどのような指標がどのような根拠で選定されるのかについて議論を整理した。第2に,持続可能性指標を実際にどのように計測できるか検討作業を行った。環境の経済評価に関しては,これまで多数の手法が開発されてきた。これらのうちバイオ燃料の評価に適したものはどれであるのか,またどのような改良が必要なのかを検討した。この結果,(1)いくつかの持続可能性指標に関しては,データ制約上,実際の計測に困難であること,(2)一部の国においては指標自体意味のないものになる可能性があること,の2点が明らかになった。 さらに,これらの検討結果を踏まえ,日本の事例に適用可能な持続可能性指標として,環境と経済の双方を捉える総合的指標の提案を行い,日本の事例において計測を行った。その結果,北海道十勝地方におけるバイオエタノール生産を想定した事例では,バイオエタノール生産導入により,地域全体として持続可能性指標は改善に向かうと結論づけられた。 本課題で得られた成果は,国際的な場で議論されている持続可能性指標をそのまま日本に適用しようとしても,一部指標については計測できない,する意味がないなどの結果となり,日本のバイオ燃料持続可能性を測るには,独自の指標が必要であることを示唆するものである。今後,GBEPにおいて持続可能性指標の議論を行う際には,さまざまな理由により,計測できない指標の取扱いをどうするかの検討も必要であり,この点を示唆した本課題は今後の議論に非常に重要な示唆を与えると考える。
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