2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21590002
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
牧野 一石 北里大学, 薬学部, 教授 (20302573)
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Keywords | ニッケル / 不斉水素化 / 触媒 / フェロセン / 動的速度論分割 |
Research Abstract |
ファインケミストリーの分野において触媒的不斉水素化反応は非常に重要な技術として位置づけられており,医薬品や農薬の化学合成において欠くことのでない方法論となっている。しかしながら,これらの技術の核となる触媒はRu,Rh,Irといった地球上の埋蔵量の乏しい貴金属を用いており,新たな新触媒の創生が望まれている。そこで我々は比較的資源として豊富で安価なニッケルを中心とした錯体による不斉水素化反応の開発を課題とし,研究を行っている。触媒には酢酸ニッケルと光学活性なフェロセン系二座型リン配位子からなる錯体を用いると不斉水素化反応が進行することを見出し,従来の2-アミノ-3-ケトエステルに加え,α-アミノケトンの系において高い光学純度で水素付加体が得られることを見出した。基質としてα-アミノケトンを用いる場合には溶媒としてトルエンをもちい,塩基として酸酸ナトリウムを1当量加える必要がある。フェロセン系二座型リン配位子としては一方のリン原子上の置換基が3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基,もう一方のリン原子上にはシクロヘキシル基が置換したものが最良の結果を与え,また働きについては不明であるが,NaBArFを酢酸ニッケルと等量(10mol%)共存させておくことが,再現性よく反応を進行させるうえで重要であることがわかっている。本反応により得られる光学活性なアミノケトンは神経伝達物質であるノルアドレナリンの構造類似体であり,多くの医薬品に共通して見出される構造であることから,非常に重要な医薬品開発のための合成中間体となることが期待される。現在,配位子となる光学活性なフェロセン類縁体の合成にとりくんでおり,さらに有用な配位子の創生をめざし研究を進めている。
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