Research Abstract |
一つの分子に複数の異なった触媒機能を持たせ、複数の触媒反応をワンポットで行うことが可能となれば、反応の効率の向上が見込まれる。超原子価ヨウ素酸化剤を基盤として、次の2つのタイプのハイブリッド型触媒を創製することが本研究の目的である。 1)複数の連続する反応を触媒するハイブリッド型触媒 2)一つの反応に含まれる複数の触媒サイクルを回すハイブリッド型触媒 上記2つのタイプの反応の可能性を検討している。22年度は,2)のタイプの新規触媒を合成し,その反応性を検討して,触媒作用を確認することができた。 すなわち,ニトロキシルラジカルである4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxyl(4-OH-TEMPO)とp-置換ヨードベンゼン類をフタル酸を用いて連結した2つの触媒4-(2-(4-iodobenzyloxycarbonyl)benzoyloxy)-2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxyl(1a)および4-(2-(4-iodophenyloxycarbonyl)benzoyloxy)-2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxyl(1b)を合成した。触媒量の1と第1級アルコール類を過酢酸存在下反応させると,対応するカルボン酸類がほぼ定量的に得られ,触媒が容易に回収された。また,触媒1bを用いると,TEMPOおよびヨードベンゼンを共に触媒として用いる場合より酸化反応が速くなり,ハイブリッドの効果が確認された。本反応では,まず過酢酸が1のヨードベンゼン部を酸化して超原子価ヨウ素種が生成し,これが分子内のTEMPO部位を酸化してN-オキソアンモニウムイオンを発生し,それがアルコールを酸化して酸化生成物を与えたと考えられる。すなわち,1は2つの異なった触媒をあわせ持つ,これまでにほとんど例のないユニークなハイブリッド型酸化触媒となった。
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