2011 Fiscal Year Annual Research Report
オートファジーの誘導を標的とする新規抗腫瘍活性天然物の探索研究
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21590023
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
三巻 祥浩 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (90229790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 侑希子 東京薬科大学, 薬学部, 助手 (70434016)
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Keywords | 細胞毒性 / HSC-2細胞 / フェナンスリジン型アルカロイド / Lycoris albiflora / オートファジー / Larrea tridentata / Santalum album / OSW-1 |
Research Abstract |
昨年度までの研究により、ヒガンバナ科Lycoris albifloraの鱗茎より単離されたフェナンスリジン型アルカロイド(FA-1と仮称)が、HL-60ヒト急性前白血病細胞およびHSC-2口腔扁平上皮がん細胞に対して強力な細胞毒性を示し、培養初期の段階においてオートファジーを誘導していることを明らかにした。そこで、透過型電子顕微鏡を用いて細胞内部を観察したところ、明らかなオートファゴゾームの形成は観察できなかったものの、ミトコンドリアの萎縮と黒変化が確認された。このような現象は、過去にモルヒノンがHL-60細胞に対してオートファジー型の細胞死を誘導する際にも確認されている。さらに、FA-1とオートファジー阻害剤である3-メチルアデニンを併用した場合、FA-1のHSC-2細胞に対する細胞毒性は有意に減弱した。これらの結果からFA-1の強力な細胞毒性は、培養初期に観察されるオートファジーの誘導が寄与していることが強く示唆された。 別に、ハマビシ科Larrea tridentataの地上部のメタノール抽出エキスより、1種に既知リグナンとともに、2種の新規リグナン配糖体を単離し、それらの化学構造を、NMR中心としたスペクトル解析と化学変換によって明らかにした。配糖体としては細胞毒性を示さなかったが、そのアグリコン部分は中程度の細胞毒性を示した。また、ビャクダン科ビャクダンSantalum albumの材のメタノール抽出エキスより数種のセスキテルペン類を単離した。これらセスキテルペン類のなかには、HL-60細胞に対して既存の抗がん剤に匹敵する細胞毒性を示すものもあったが、オートファジーの誘導は確認されなかった。さらに、米国ハーバード大学との共同研究により、強力な抗腫瘍活性物質OSW-1の作用メカニズムの一端を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いくつかの天然物や抗腫活穫物質にオートファジー誘導活性が認められているが、オートファジーの誘導が細胞毒性の活性の増強に寄与している例はほとんどない。本研究を通じ、Lycoris albifloraより単離したフェナンスリジン型アルカロイドFA-1においては、その強力な細胞毒性の発現に培養初期に観察されるオートファジーの誘導が関与していることが強く示唆され、「オートファジーの誘導を標的とする新規抗腫瘍活性天然物の探索研究」としては十分な結果を得ていると判断している。特にFA-1が、既存の抗がん剤が効きにくいHSC-2細胞に対してオートファジーの誘導を介した強い細胞毒性を示すことを見出したことは大変意義ある研究成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)FA-1の誘導体を合成して活性評価を行い、構造活性相関を検討して活性構造の最適化を試みる。 2)FA-1のHSC-2細胞以外の固形がん細胞に対する細胞毒性、オートファジー誘導活性を評価する。 3)Larrea tridentataに含まれるリグナン類やSantalum albumに含まれるセスキテルペン類について、さらに単離精製、構造解析を進め、併せて細胞毒性、オートファジー誘導活性を評価する。 4)OSW-1について、継続して作用メカニズムの解明を進める。
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Research Products
(4 results)