2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜局所構造解析による膜ドメイン形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
21590037
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 隆史 東北大学, 大学院・薬学研究科, 准教授 (30222318)
|
Keywords | 細胞膜 / 脂質ラフト / 神経変性疾患 / ラマン分光法 |
Research Abstract |
本研究は、脂質ラフトがどのような分子機構に基づいて形成され、タンパク質の構造と機能を制御しているかを、構造生物学の立場から解明することを目的とした。23年度の主な研究成果を以下に記す。 (1)ホスファチジルコリン(PC)膜に対するアミロイドβペプチド(Aβ)の結合、および結合が膜の流動性に与える影響を調べた。Aβ1-40は液晶相のPC膜には結合せず、ラメラゲル相のPC膜に対してのみ結合する。これに対して、Aβ1-42は液晶相とゲル相のどちらのPC膜に対しても結合する。Aβ1-42の結合により、液晶相PC膜の流動性は顕著に減少し、特にペプチド高濃度ではゲル相膜の流動性に匹敵する程にまで低下した。次に、液晶相膜に対する親和性および流動性に与える影響がAβ1-40とAβ1-42とで大きく異なる原因を調べた。その結果、Aβ1-40は水溶液中で不規則構造のモノマーとして存在するのに対し、Aβ1-42は溶解直後から分子間で会合し、βシートを形成していることがわかった。即ち、Aβモノマーは液晶相膜に対しては、膜表面に負電荷が存在しない限り結合しないが、オリゴマー化したAβは結合し、膜の流動性を低下させると考えられる。 (2)Aβ1-42オリゴマーの結合が膜の構造に与える影響をラマン分光法により調べた。結合により、液晶相のPC膜の流動性がゲル相に匹敵するレベルまで低下することから、脂質炭化水素鎖のコンホメーション変化が引き起こされると予想されたが、Aβ1-42オリゴマーが結合しても、トランス型とゴーシュ型のコンホーマー比にほとんど変化は見られなかった。 これらの知見は、アルツハイマー病の原因となる、脂質膜上におけるAβ集積・会合のメカニズムを解明するうえで、重要な鍵となると考えられる。また、本研究により、オリゴマーの結合による流動性の低下が脂質ラフト形成の契機となる可能性も示された。
|