2009 Fiscal Year Annual Research Report
臨床応用へ向けた抗癌薬や遺伝子治療薬の肝臓表面適用製剤の開発
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21590042
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
西田 孝洋 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20237704)
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Keywords | 薬剤学 / 薬理学 / 遺伝子 / 臨床応用 / 癌 / 薬物送達システム / 粘性添加剤 / 吸収速度 |
Research Abstract |
肝臓などの臓器表面からの薬物吸収に基づく新規投与形態ドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発を目指し、臓器表面への適用に最適な抗癌薬や遺伝子治療薬のDDS製剤の基本情報を検討し、癌化学療法や重篤な疾患治療への臨床応用へ向けた基盤研究を行う。そこで、今年度の本研究課題においては、癌化学療法への応用の最初の段階として、抗癌薬の理想的な肝臓内微視的分布が得られる製剤学的条件を解析するために、粘性添加剤併用時の肝臓表面からの薬物吸収速度の予測に関する基礎的知見を得るために、粘度や透析膜の透過性に及ぼす粘性添加剤の影響を調べ、in vivoにおける薬物吸収速度との相関性を検討した。粘性添加剤としてカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースを添加して、5-FUなどの各種モデル化合物の透析膜からの放出性を調べた。in vivoで高い吸収抑制効果を示したPVA 15%において、in vitro透析膜透過実験では、いずれのモデル化合物の放出量は大きく低下した。透析膜内残存率の経時変化を片対数プロットしたところ、直線的な減少を示し、その傾きより放出速度定数を算出できた。いずれのモデル化合物についても、肝臓表面からの吸収速度定数とin vitroでの放出速度定数との間に良好な相関関係が認められた。したがって、in vitroでの簡便な透過実験から放出速度定数を算出し、肝臓表面からの薬物吸収を予測できる可能性が示唆された。今回得られた知見は、肝臓表面投与法に適用可能な製剤の開発において有用な基礎的情報になると考えられ、次の段階として、臨床応用を想定した肝疾患病態モデル動物に対して、粘性添加剤などによる適切な製剤修飾を施したDDS製剤による治療実験を試みていく。
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