2010 Fiscal Year Annual Research Report
臨床応用へ向けた抗癌薬や遺伝子治療薬の肝臓表面適用製剤の開発
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21590042
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
西田 孝洋 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20237704)
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Keywords | 薬剤学 / 薬理学 / 遺伝子 / 臨床応用 / 癌 / 薬物送達システム / 粘性添加剤 / 吸収速度 |
Research Abstract |
肝臓などの臓器表面からの薬物吸収に基づく新規投与形態ドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発を目指し、臓器表面への適用に最適な抗癌薬や遺伝子治療薬のDDS製剤の基本情報を検討し、癌化学療法や重篤な疾患治療への臨床応用へ向けた基盤研究を行う。そこで今年度の本研究課題では、抗癌薬の理想的な肝臓内微視的分布が得られる製剤学的条件を解析するために、薬物の脂溶性と肝臓表面からの吸収特性、および各種粘性添加剤の影響を調べ、in vivoにおける薬物吸収速度との相関性を検討した。脂溶性の異なる各種薬物の肝臓表面からの吸収動態を検討したところ,薬物の脂溶性の上昇に伴い肝臓表面からの吸収速度は増加する傾向を示し、脂溶性と分子量を考慮した数式で説明できた。しかし、脂溶性が高すぎると逆に吸収速度は大きく低下した。一方、粘性添加剤としてカルボキシメチルセルロースやポリビニルピロリドン(PVP)などを添加して、5-FUなどの脂溶性が異なる各種モデル化合物の透析膜からの放出性を調べた。in vivoで高い吸収抑制効果を示したPVP40%において、in vitro透析膜透過実験では、いずれのモデル化合物の放出量は大きく低下した。さらに、脂溶性の違いに応じて、モデル化合物の吸収抑制効果に差異が認められた。したがって、薬物の物理化学的性質(分子量,脂溶性)に基づいて,最適な粘性添加剤などを選択することによって、肝臓表面からの薬物吸収速度を正確に把握できる可能性が示された。今回得られた知見は、肝臓表面投与法に適用可能な製剤の開発において有用な基礎的情報になると考えられる。
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