Research Abstract |
多様な化学構造の薬物に対し,実測可能な範囲内で良好な分配係数(K)を与え,かつ広範囲のlog Po/w値に換算することができる新規な二相溶媒系(平成21年度に組成を確定済み)を用いて,1)同二相溶媒系を固定相/移動相とする高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)法,及び2)フローインジェクション分析(FIA)法,の二手段によるK値の自動測定法の条件最適化を検討した.1)のHSCCC法は,二相溶媒系の一方の相を固定相としてHSCCCの遠心装置内に保持させながら,他方の相を移動相として送液する動的平衡状態を形成させた後,被検薬物を注入し,薬物ピークの保持時間からK値を求める連続分析法である.しかしながら,遠心装置内における二相の動的平衡状態を維持させる最適条件が見つけられず,断念した.一方,2)のFIA法は,試験管内で二相溶媒に分配させた薬物の上相液と下相液をそれぞれ後述のFIA装置に注入し,各相中の薬物濃度(吸光度)比からK値を求める連続分析法である.FIA装置として,UV/VIS検出器とオートサンプラーを備えたHPLC装置(分離カラム無し)を使用した.その結果,本FIA法はバイアル一つの測定時間が約1分と迅速で(1検体のK値算出に要する時間:1分×2相×繰り返し3回=約6分),再現性や精度が高い手法であることを確認した.そこで,本FIA法により,(log P値が既知の)50種類以上の薬物類についてK値の測定を行い,得られた実測K値から10g P値を換算するための精度の高い相関式を作成することができた.この方法でのlog P計測範囲はおおよそ+8~-8の範囲であろうと見積もっている. 構築したFIA法と相関式を用いて,さらに,これまでlog P値が計測されたことが無い高極性(親水性)化合物のlog P値の測定を開始した.具体的には,生体アミノ酸(全20種類),ペプチド,タンパク質,核酸塩基,ヌクレオシド,ヌクレオチド等であり,化学構造と親水性パラメータや生理活性との相関について,今後検討していく.
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