Research Abstract |
シアリルルイスxは,糖鎖癌抗原の一つであり,腫瘍マーカーとして臨床応用されている.しかし,シアリルルイスxをもつタンパク質として同定されている分子は少ない.報告者はこれまでに,大腸癌細胞株T84及びHT-29のグライコミクスを行い,シアリルルイスxをもつタンパク質の候補として,RNP A1, A2/B1, A3,及びLなどのヘテロ核リボ核酸タンパク質/RNA結合タンパク質(hnRNP)の一部を同定した.本研究では,シアリルルイスxとhnRNPファミリータンパク質にターゲットを絞って,発癌とhnRNPファミリータンパク質の発現の関係,発癌とhnRNPファミリータンパク質のシアリルルイスx修飾の関係,及び腫瘍マーカーとしての可能性を明らかにする. 本年度は,まず,HT-29細胞におけるシアリルルイスx抗原の細胞内局在性を調べた.腫瘍マーカーSLXとして知られる抗シアリルルイスx抗体を用いて蛍光免疫染色を行ったところ,シアリルルイスx含有糖タンパク質は主として,核膜周辺部およびゴルジ体に存在することが確認された.そこで,ZR-75-30細胞(乳癌細胞),BxPC-3細胞及びCapan-1細胞(膵臓癌細胞),HepG2細胞(肝臓癌細胞),HL-60細胞(骨髄性白血病細胞),K562細胞(骨髄性白血病細胞),乳腺上皮正常細胞,気管支上皮正常細胞,血管内皮細胞,皮膚上皮細胞,間葉系幹細胞等から核タンパク質/ゴルジ体タンパク質画分を抽出し,抗シアリルルイスx抗体を用いたウエスタンブロット法を行ったところ,RNP A1, A2/B1, A3の分子量に相当する位置に,癌細胞特異的にシアリルルイスx含有糖タンパク質が確認された.
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