Research Abstract |
糖鎖癌抗原であるシアリルルイスx(sLe^X)は,腫瘍マーカーとして臨床応用されているが,同定されているキャリアタンパク質は少ない.報告者はこれまでに,大腸癌細胞のグライコミクスにより,sLe^Xの新規キャリアタンパク質候補として,ヘテロ核リボ核酸タンパク質(hnRNP)ファミリータンパク質であるhnRNP A1,A2/B1,A3などを同定してきた.本研究の目的は,発癌とhnRNPファミリータンパク質の発現の関係,発癌とmRNPファミリータンパク質のsLe^X修飾の関係,及び腫瘍マーカーとしての可能性を検討することである. 今年度は以下の課題について研究を実施した. 1.hnRNP A1アイソフォームの同定 2次元電気泳動により分離されたhnRNP A1をゲルから回収し,プロテアーゼ消化後,LC/MS^2によるペプチドマッピングを行った.その結果,大腸癌細胞株HT-29で発現している主要なアイソフォームは,一部のアミノ酸配列が欠落している"A1-A"であることが示唆された. 2.細胞周期間における発現レベルの推移 発癌とsLe^X修飾,及び発癌とhnRNPファミリータンパク質の関係を明らかにするために,異なる細胞周期間における発現レベルを解析した.その結果,抗sLe^X抗体に反応性を示すhnRNPファミリータンパク質の発現レベルは,DNA合成期から分裂準備期にかけて亢進することが明らかとなった. 3.sLe^X修飾hnRNP発現の検証 hnRNPがsLe^Xキャリアタンパク質か否かを検証するために,試料をシアリダーゼで消化した後,抗sLe^X抗体との反応性を確認し,抗sLe^X抗体と抗原との親和性は,ノイラミニダーゼ消化により低下することを確認した.つぎに,α1-3フコースと結合するヒイロチャワンタケレクチン(AAL)精製物のLC/MS^2解析を行ったところ,hnRNPファミリータンパク質が同定され,hnRNPにフコースが結合している可能性が示唆された.以上のことから,hnRNPがsLe^Xキャリアプロテインである可能性が引き続き示唆された.
|