2010 Fiscal Year Annual Research Report
線虫におけるD-アミノ酸酸化酵素の時空系分布の解析とD-アミノ酸含量の分析
Project/Area Number |
21590071
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
本間 浩 北里大学, 薬学部, 教授 (50190278)
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Keywords | D-アスパラギン酸 / D-アミノ酸 / D-アスパラギン酸酸化酵素 / D-アミノ酸酸化酵素 / 線虫 |
Research Abstract |
ヒトを含めた生体内には、D型アミノ酸を機能分子とする新規なバイオシステムが存在する。我々は、その分子論的解析を行うため、遺伝学的・分子生物学的解析がしやすいモデル生物である線虫を用いて研究を行っている。線虫のゲノムデータベースにおけるD-アミノ酸関連酵素の遺伝子探索を行ない、特に、D-アミノ酸を立体特異的に分解する酵素(D-アミノ酸酸化分解酵素)には4つの機能的遺伝子が存在することを同定した。すなわち、中性と塩基性D-アミノ酸を基質にするD-アミノ酸オキシダーゼ1種類(DAO)と、酸性D-アミノ酸を基質とするD-アスパラギン酸オキシダーゼ3種類(DDO-1~-3)である。昨年度は、これらの酸化分解酵素の線虫体内における時空系分布を解析した。また我々は,さまざまなD-アミノ酸を分離分析するHPLCシステムを2種類開発し、ヒトの試料をはじめ、げっ歯類、水棲動物から植物にいたるまで、さまざまな生物中のD-アミノ酸の分析を行ってきた。今年度は、これらのシステムを用いて、各生育ステージの線虫体内に存在するD-アミノ酸の網羅的な分離定量を行った。線虫は、生育を同調させることで、ライフサイクルの各生育ステージの材料を容易にかつ多量に集めることができる。採集した線虫を超音波により破砕し、TCAによる除タンパクをした後、遊離のアミノ酸を抽出し蛍光誘導体化して高感度定量を行った。その結果、解析したすべての発生段階でD-Ser、D-Asp、D-AlaおよびD-Gluが検出された。また、これらのD-アミノ酸含量が成長に伴って増加していることが明らかになった。一方、DAO、DDO-1、DDO-2またはDDO-3遺伝子に欠失のある変異株体内のD-アミノ酸を定量したところ、DDO-2変異株では野性株との違いは認められなかったが、DAO、DDO-1およびDDO-3変異株では、それぞれD-Ala、D-AspおよびD-Gluの量が野生株と比較して有意に増加していることが明らかになった。
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