2009 Fiscal Year Annual Research Report
シグナル伝達分子の異常の解析とこれを標的とする薬物の開発
Project/Area Number |
21590072
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
笠原 忠 Keio University, 薬学部, 教授 (60049096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多胡 めぐみ 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (30445192)
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Keywords | 接着分子FAK / JAK2 / チロシンリン酸化 / Epoシグナル / V617F変異体 / 腫瘍形成能 / STAT5 / 真性赤血球増加症 |
Research Abstract |
【目的と結果】我々はこれまでに、接着分子FAK下流のシグナル分子を同定するとともに、JAK2内の多数のリン酸化部位の役割について検討を重ねてきた。本年度は、(1)JH1やJH2キナーゼドメイン内のチロシンリン酸化がEpoシグナル系で負に制御する部位であることを明らかにした。(2)JAK2点変異体V617FやL611S変異体は異常増殖に関与することを突き止め、in vivoでの腫瘍形成能や転移能の検討を行った。その結果、V617F変異体は異常な細胞周期を示すこと、in vitroならびにin vivoでの増殖ならびにヌードマウスでの腫瘍形成能が亢進することを明らかにした。(3)V617F下流のシグナル分子や腫瘍形成の機序について検討を行った。すなわち、V617F変異体は恒常的に活性化されているが、その下流転写因子として、とくにSTAT5の関与が重要であることを明らかにした(J Biol Chem2010)ほか、Erk,Akt,NF-κBが関与していることを示した。さらに、(4)JAK2の下流分子の同定を行う目的で、JAK2V617Fに変異が見られるヒトCML患者由来HEL細胞からcDNA発現ライブラリーをレトロウイルスで構築した。これをBaF3細胞にレトロウイルスで導入し、サイトカイン非存在下に増殖する細胞コロニーを回収し、PCR法により、インサートDNAの同定を行った。 【本研究の意義と重要性】JAK2シグナルの異常は真性赤血球増加症や急性白血病の原因となることから、JAK2キナーゼ活性に対する阻害剤を探索することは創薬につながる重要なテーマである。我々の遺伝子変異導入を利用した細胞内シグナル分子の解析は、細胞の異常増殖、接着、転移という細胞の基本的な分子の役割解析と同定に重要な方法を与えるものである。
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Research Products
(16 results)