2009 Fiscal Year Annual Research Report
NR4A2を介したIL-17産生制御による新規自己免疫疾患治療法の開発
Project/Area Number |
21590087
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
大木 伸司 National Center of Neurology and Psychiatry, 神経研究所・疾病研究第六部, 第三研究室長 (50260328)
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Keywords | 自己免疫疾患 / 多発性硬化症 / 核内受容体 / NR4A2 / インターロイキン17 / Th17細胞 / バイオマーカー |
Research Abstract |
我々は、レチノイン酸受容体などに代表され、転写因子として様々な遺伝子発現に関わることが知られている核内受容体分子に着目し、多発性硬化症(MS)をはじめとする種々の自己免疫疾患の病態解明と新規治療法の開発を目指して研究を進めている。多発性硬化症患者末梢血サンプルを用いたマイクロアレイの結果、T細胞での発現亢進が認められたオーファン核内受容体分子NR4A2は、MSおよびその動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)において病態に深く関わる重要な分子であることを明らかにしている。MSなどの自己免疫病態には、炎症性T細胞であるTh17細胞が重要な機能を果たすことから、Th17細胞制御因子としてのNR4A2の機能解析を中心に研究を進めた結果、末梢血T細胞のNR4A2発現は、自己免疫応答に伴うTh17細胞分化と密接に連関して変動することが明らかとなった。これはNR4A2が、MS病態のモニタリングに有効なバイオマーカーとして応用できる可能性を示しており、現在MS患者サンプルを用いた解析を展開している。さらに我々が構築したNR4A2特異的siRNAを用いて、NR4A2の作用点の一つがT細胞のIL-21産生にある可能性を明らかにした。IL-21はTh17細胞分化に重要なサイトカインであり、引き続き作用メカニズムの詳細を解析中である。さらに同siRNAをコラーゲン含有安定化基質に封入し、マウス静脈内に単回投与することで、EAE病態を効果的にに抑制できることを明らかにした。これはMSをはじめとする種々の自己免疫疾患の新規治療薬として、NR4A2の機能を阻害する低分子化合物が応用できる可能性を示しており、極めて興味深い結果と考えている。現在、in silicoスクリーニングなどの手法を組み合わせて、NR4A2を標的とした低分子阻害薬の創出を目指した基礎研究を進めている。
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